特殊清掃の消臭について

ある不動産管理会社の方から、「孤独死の臭いは本当に消せるのでしょうか?何社か管理物件において消臭を依頼しましたが、1年経っても臭いが消えていません。」との、問い合わせでした。

結論から申し上げますと「臭いは完全に除去できます。」

1 臭いの除去ができないケース(消臭剤とオゾン燻蒸のみの施工)

最悪なケースを最初に御紹介させて頂きます。家財撤去後に消臭剤を噴霧しオゾン燻蒸を行う場合です。分かりやすく御説明させて頂くと、腐敗した「体液(臭気源)」が除去されていない状況で「オゾン燻蒸」を行っても臭いの除去は行えません。必ず湿度や気温の上昇とともに「臭い」は戻ってきます。

2 臭気源の除去が行われていないケース

フローリングや畳、など腐敗した体液を洗浄し拭き取るだけで、「特殊清掃」と言う業者もいます。腐敗した体液はフローリングや畳に浸潤しています。いくら表面を洗浄したとしても臭気除去を行う上では、何の効果も期待できません。

浸潤した体液はフローリング等を貫通し床下まで落ちている事も有ります。現在、施工している特殊清掃現場は木続2階建ての構造で、臭気源は玄関の真上に有る和室です。この現場では、発見(孤独死)まで時間が経っていた事もあり体液が「畳」「床板」「大引き」「根太」「1階玄関天井」まで浸潤していました。この状態になると浸潤部、全ての撤去が必要となります。

3 単一の洗浄剤しか使われないケース

孤独死やゴミ屋敷における特殊清掃では多種多様な性質を持った臭気源が存在します。臭気源の基となる物は複数に、またがり存在します。また、そのような状態の場合は「カビ」が必ず発生しカビ臭もあります。カビの除去一つをとって薬剤(洗浄剤)は異なる性質の物を使用しなければなりません。薬剤の多くは薬剤毎に丁寧な拭き取りが求められます。これは異なる薬品が混ざり合う事により毒性が生じる場合があるからです。このように単一、もしくは数種類のみの薬剤での消臭は不完全な結果となる為です。

4 臭気源しか対応しない特殊清掃の場合、臭気は消臭源だけには留まりません。

②で申し上げた状況では2階床下から1階玄関の天井との間にも臭気は残っています。以前も申し上げましたが、臭気は腐敗したガスや体液が揮発した物質が付着する事による物です。当然、③の状況の場合、2階床下から1階天井に、たれ落ちた体液は床下と天井の隙間の狭所部に滞留しています。この部分の臭気除去作業を行わなければ特殊清掃の下処理(前作業)は成立しません。特殊清掃において下処理は最も重要な工程です。ここで90%~95%(私の感覚です)の臭気源の除去を行えていないと特殊清掃は失敗する事になります。90%~95%の臭気源除去の基準は冬場であれば(乾燥しており尚且つ湿度が低くなる環境)では臭いを感じ取りにくいレベルで暖房器具を使用し確認できる程度で有り夏場では僅かな臭いを感じる程度としています。

ただ、臭気源の周りに取り付けられている石膏ボードの臭いは残ります。ここの見極めがプロに求められる条件となります。石膏ボードは直接、体液を吸い上げて無い限りプロの業者であれば臭いの除去は行えます。

5 消臭剤の散布

消臭剤の使用方法について、他の業者が使用している消臭剤を弊社も使用する事が有りますが、多くの業者は消臭剤ラベルに明記されている希釈や使用方法を基準に使用しています。特殊清掃において特殊清掃自体を「作品」として例えるので有れば、現場は全てオーダーメイドです。湿度・温度・御遺体発見までの期間・性別・体重・臭気源場所・家屋の方角・家屋の構造など、どれを取っていても同じ工法で消臭できるものではありません。その現場の環境や状況に合わせて消臭剤の濃度や噴霧方法(これは社外秘です。)を用いなければ効果的な消臭は行えません。

弊社においてはクリエーション社の消臭剤も使用しています。この消臭剤の効果は群を抜いた物ですが扱い方や使用方法にある程度の水準とノウハウが有れば効果的な消臭は行えます。それを持ち合わせていない業者が使用しても効果はありません。

6 消臭塗料(コーティング剤)の使用

消臭塗料を使用する上において体液の洗浄による除去を行わない限り効果は有りません。あくまで体液の除去後について記載させて頂きます。消臭塗料も色々な材質に合わせた物があります。一般的に物で言えばモルタル用です。これは主にフローリング等の床板の下はモルタル(基礎部分)で作られている為です。

また、大引き等の木材部分用の物や天井等の部材に使用されているジプトーン用です。モルタル用、木材用、ジプトーン(天井用の石膏ボード)等は水により希釈を行いますが、それぞれ希釈の割合は異なります。また、ジプトーン用は中国地方では弊社しか取り扱っていません。臭気源の天井がジプトーンの場合、多くの業者は消臭剤で対応するようですが、これでは完全に臭いの除去を行う事はできません。ジプトーンは「虫食い」に似た様な凹凸が有ります。また、天井に有る為、消臭剤も重力の働きにより、うまく浸透しません。以上、臭気源の設備環境により消臭塗料の用途や、希釈も変わってくる為です。

以上の様に、きめ細かい作業が求められるのが特殊清掃です。下処理方法や薬剤の運用方法を多くの業者が習得できていないのが残念な特殊清掃業界の実態です。特殊清掃業界でもリーディングカンパニーでは一昨年より昨年、昨年より今年より来年に向けて新たな施工方法を構築しています。弊社も弊社なりに施工方法は毎年、変わって来ています。その多くは「まじめに取り組む」特殊清掃業者間での情報交換や情報共有で得ている物です。

これから、特殊清掃を検討されている方は、県内・県外問わず「特殊清掃は分からない」では無く、出来るだけ知識を高めて下さい。分からない事はお気軽に御連絡ください。弊社に関係の無いエリアの方でも構いません。正しい情報を得る事で正しい「業者選定」が行える物と私は思っています。

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