仏壇供養と宗教の習わし

現在、日本では主に仏教の13宗派が存在しており人々の生活と密接に関係していますが、同じ仏教であっても宗派により教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法はそれぞれ違います。

私たちが普段日常生活を送る上では、自分の家の宗派が分からなくて困るということはありませんが、お葬式やお墓の場面では宗派は大きく関係してきます。宗旨によりお葬式の意味合いが変わり、宗派によりそれぞれの作法や決まり事があるからです。

そもそも宗旨・宗派を知らなければ、お葬式をどこのお寺に頼めば良いのか分かりません。ご自分の家の菩提寺(先祖代々のお墓や家でお付き合いのあるお寺など)があればかまいませんが、中には急に葬儀が入って葬儀会社にすべて任せたのは良いが親戚から宗派が違うと言われて大変困ってしまったケースが多々あります。

今日は、そのようなことにならないためにも13宗派の特徴などについてお話させていただこうと思います。

まず宗派とは、約2500年前頃にインドのブッダが開いた仏教から歴史的経緯を経て派生した分派のことです。仏教は、インドから中国や朝鮮へと広まり538年頃に日本にも広まったのですが、その過程でさまざまな宗派が生まれたと言われています。

538年に日本に伝来した仏教は、聖徳太子が天皇を補佐する摂政になった際に広まったと言われていますが、それより以前に民間には渡来人などによって伝えられていたとも言われています。

平安末期から鎌倉時代にかけて政治の実権が貴族から武士へと移る転換期であったことや天災・飢餓・疫病などによって民衆の苦しみが深まったことなどが要因で先行き不安な民衆の救いとして鎌倉時代には新しい宗派が次々と生まれました。

現在、日本に伝わった仏教の13宗派は「法相宗(ほっそうしゅう)」「華厳宗(けごんしゅう)」「律宗(りっしゅう)」「天台宗(てんだいしゅう)」「真言宗(しんごんしゅう)」「融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)」「浄土宗(じょうどしゅう)」「浄土(じょうど)真宗(しんしゅう)」「時宗(じしゅう)」「臨済宗(りんざいしゅう)」「曹洞宗(そうとうしゅう)」「黄檗宗(おうばくしゅう)」「日蓮宗(にちれんしゅう)」とされています。

ここからはそれぞれの特徴をお話していきます。

・法相宗(ほっそうしゅう)

中国の有名な小説、西遊記で知られる玄奘(げんじょう)三蔵(さんぞう)の弟子にあたる慈(じ)恩(おん)大師(たいし)(窺基(きき))により開かれ、日本には同じく玄奘に師事した道(どう)昭(しょう)という僧が伝えました。存在のあり方、自分の心を研究していく思想を持っていて、密教のように即身成仏ではなく長い時間をかけて修行を重ねることにより成仏を目指す教えとなっています。

基本的には葬儀は行いません。

・華厳宗(けごんしゅう)

中国の()(じゅん)が開き、日本には良(ろう)弁(べん)が伝えました。大乗仏教の中でも広範で哲学的な教学で一がそのまま多であり、多がそのまま一であるという相反するものを一つに統括するという考え方や存在をありのままに見ることを重視する独自の思想を持っていて修行が難しいことでも知られています。

基本的には葬儀は行いません。

・律宗(りっしゅう)

中国の(ほう)(そう)が開き、日本には日本史の教科書の中でも有名な鑑(がん)真(じん)が伝えました。経典や論を重んじる宗派が多い中、律宗は修行者に対する規律である戒律を守ることに重きを置く宗派で、戒律への理解を深めて厳格に守ることで悪事が防げる摂律義戒と考えられています。

基本的には葬儀は行いません。

・天台宗(てんだいしゅう)

平安時代初期に伝教大師最澄(さいちょう)が中国の唐へ渡り修行の後に日本に戻って伝え、大乗仏教の宗派の1つで円(法華経)・密(密教)・禅・戒(戒律)の全てを大切にする四宗融合という考えを持っています。仏の教えを自分を救い他人を利するという顕(けん)教(ぎょう)と仏と自己の一体を観念し、仏の力で仏の境地に達するという密教(みっきょう)としていて、この2つの教えで故人の罪や穢れを払い、故人や縁者と一緒に仏道に達するという考え方をしています。本尊は阿弥陀如来や釈迦如来で経典は法華経(ほけきょう)です。

後の宗祖となる法然上人・親鸞聖人・道元禅師・明庵栄西・日蓮聖人など日本仏教の宗祖の多くがここで学んでいるので、他の宗派との違いが少ない宗派です。

葬儀は顕教法要・例時作法・密教法要という3つの儀式を行い、決められているわけではありませんが焼香の回数は1~3回とされています。

・真言宗(しんごんしゅう)

平安時代に弘法大師空海(くうかい)が開いた日本で唯一の純粋な密教(大日如来が直接説いた教え)の宗派です。密教とは秘密の教えのことを指し、大衆に向けてではなく教えを修めた限られた人たちの間でのみ信仰が許されるとし、心のあり方や価値観などを10段階に分類して考える十住心思想を説いています。経典は大日経と金剛頂経の2種類です。

葬儀は、故人を密厳浄土(三密の万徳によって荘厳された大日如来の浄土)に送り届けるための儀式として執り行い、今世で身についた悪い考えや習慣などを葬儀によって浄化し、仏様の加護を得られるように供養します。焼香の回数は3回です。

・融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)

天台宗の比叡山で出家した僧侶の(りょう)(にん)が平安時代の末期に開き、唯一の日本発祥の宗派になります。物と物は全て相互に融通しあっているとして、1人が唱える念仏は全ての人の功徳となり、全ての人が唱える念仏は1人の功徳となる他力往生の教えをもとに、念仏によってこの世で浄土に至ることができるとして日課念仏(毎日100編の念仏を唱える)を基本としています。

葬儀は僧侶と参列者が南無阿弥陀仏と念仏を唱え、形式は自由度が高く銅鑼や太鼓などを用いるのが特徴です。

・浄土宗(じょうどしゅう)

法然上人が1175年に開いた大乗仏教の宗派である浄土宗は、浄土専念宗とも呼ばれています。修行ではなくひたすら南無阿弥陀仏と念仏を唱え、阿弥陀仏の帰依や感謝を表すとともに、阿弥陀仏の力で仏の救済を受け、死後は浄土に生まれることができるという教えです。本尊は阿弥陀如来と阿彌陀仏で、経典は観無量寿経です。現在は、浄土宗(鎮西派(ちんぜいは))・西山(せいざん)浄土宗・浄土宗西山(せいざん)深(ふか)草派(くさは)・浄土宗西山(せいざん)禅林寺派(ぜんりんじは)の4つの宗派に分かれています。

葬儀は、南無阿弥陀仏と念仏を唱えることにより極楽浄土に往生できるという教えにより、念仏の唱和が重視されており、焼香の回数は特に定められていません。

・浄土(じょうど)真宗(しんしゅう)

浄土宗を開いた法然上人に師事し、師の教えをさらに推し進めた親鸞聖人が鎌倉時代に開いた宗派の浄土真宗は、仏教で禁止された肉食妻帯の許可や悪人正機を唱えています。ご本尊は阿弥陀如来です。念仏を唱えることで浄土に往生するのではなく、阿弥陀如来は全ての人々を救うことができる本願力(本願が成就し仏と成ったことによって得た力)を持っているとされ、この本願の力によって救われる他力(仏・菩薩の加護の力)を説いていて、この阿弥陀如来の救いを信じれば往生できる教えです。経典は無量寿教です。浄土真宗は10の宗派があり、その中でも浄土真宗本願寺派(西本願寺)と真宗大谷派(東本願寺)は2大宗派と言われ、国内でも圧倒的な最大宗派となります。

葬儀は、阿弥陀如来に感謝を伝えるために執り行い、焼香は額に押しいただかずに1回行います。

・時宗(じしゅう)

法然上人の高弟に学んだ一遍(いっぺん)により鎌倉時代末期に開かれ、念仏を唱えて成仏するのではく念仏を唱えることがすなわち往生であるという教えに基づき、阿弥陀仏への信心に関わらず南無阿弥陀仏と念仏を唱えれば誰でも極楽浄土に往生できるとしています。太鼓や鉦などを打ち鳴らし踊りながら念仏を唱える踊念仏(おどりねんぶつ)が特徴ですが、現在では実施されている地域が少なく重要無形民俗文化財に指定されています。経典は阿弥陀経でご本尊は阿弥陀如来です。

葬儀は、浄土宗から派生しているため浄土宗の形式で執り行われ、焼香の回数は特に決められていません。

・臨済宗(りんざいしゅう)

平安末期に天台宗を学んだ明庵栄西によって中国から伝えられ、その後江戸時代に白陰禅師によって確立されました。鎌倉時代から室町時代にかけて貴族を中心に公家文化として広まり、曹洞宗と同じく座禅で悟りを得る自力の教えを説き、知識ではなく悟りを重んじていて、公案禅という与えられた公案に対して座禅をしながら答えを工夫するという座禅を行います。ご本尊は釈迦牟尼仏です。

葬儀は、故人を仏の弟子とする授戒の儀式と仏生(言葉による理解を超えたことを理解する能力)に目覚めさせ仏の世界へと導くための引導の儀式が執り行われ、焼香は額に押しいただかずに1回行います。

・曹洞宗(そうとうしゅう)

天台宗と臨済宗を学んだ道元禅師によって800年ほど前に中国から日本へ伝えられた座禅で悟りを開く宗派で、お釈迦様が座禅の修行に精進しその結果悟りを開いたことに由来しています。悟りを開くために座禅を行うのではなく、座禅する姿そのものが悟りであるという教えを説いていて、何も考えずただひたすらに座禅をする黙照禅で行われます。武士を中心に質実剛健の武家文化に広まりました。ご本尊は釈迦如来です。

葬儀は、故人を仏の弟子とする授戒の儀式と仏生(言葉による理解を超えたことを理解する能力)に目覚めさせ仏の世界へと導くための引導の儀式が執り行われ、焼香は2回行い、1回目のみ額に押しいただきます。

・黄檗宗(おうばくしゅう)

明の時代の中国の僧である隠元(いんげん)により開かれ、江戸時代初期に日本へ伝わりました。阿弥陀信仰と融合した明時代の中国臨済宗の流れをくんでいて、人は生まれつき悟りを持っているとされる正法眼蔵という考え方から自分自身の心に向き合うことを大切にしています。自分の心の中に仏を見出すことを目的としてそのために必要なのが坐禅だとして臨済宗と同様に公案禅を行いますが、南無阿弥陀仏と念仏を唱えて座禅する念仏禅の修行も行います。

葬儀は、基本的には臨済宗と同様の形式で執り行われ、焼香は3回額に押しいただきます。

・日蓮宗(にちれんしゅう)

鎌倉時代に日蓮聖人によって開かれた日蓮宗は、お釈迦様が説かれた法華経を最高の教えと位置づけ南無妙法蓮華経と唱えることが重要な修行であるとしていて、南無妙法蓮華経と題目を唱えれば理想の世界が訪れ、あらゆる人々の苦悩を根本から解決して永遠に救われると説いています。他の宗派のように複数の経典があるのではなく、一つの教えを極めるという考えから法華経以外はほぼ使用しないというのが特徴です。ご本尊は久遠の本師釈迦牟尼仏です。

葬儀は、故人を霊山浄土へ旅立たせるために南無妙法蓮華経と題目を唱え、焼香は3回額に押しいただきます。

まとめ

今日は、日本で主な仏教の13宗派の特徴についてお話させていただきました。

同じ仏教とはいえ宗派の違いによって教えはさまざまですし、お葬式の意味合いや方式が変わり、それぞれの作法や決まり事があります。

宗派をご存じない方は、ご自身の宗派がどこでどういった様式なのか一度調べてみてはいかがでしょうか。

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