特殊清掃の工期について

先日、お客様からの入電で特殊清掃の工期が業者によって何故、違うのか?の問い合わせを頂きました。

最初にまとめて申し上げると「工程」の違いです。

1 消毒

孤独死の場合、死亡現場では汚染液体や揮発した気体やガスが存在するのと同時に血液性病原菌やウィルス感染のリスク排除をしなくてはなりません。皆さんが以前良く耳にされていた「コロナウィルス」・「肝炎ウィルス」・「HIV」等です。この多くのウィルスは寄生生物で有り、生きた宿主の体内のみで生きて行く事ができます。ただ、死亡後もウィルスの生存期間は2週間を目安にされています。

同時にリスクがあるのが雑菌(菌類)です。菌類は亡くなられた方の有機体など、水分を含む物を餌に生きています。菌類は植物の様な特徴を持った微生物グループで代表的に怖いのが「破傷風」です。植物がエネルギーを自給自足できる事に対し菌類は葉緑素を持ち合わせていないので自給自足が行えません。菌類とバクテリアは自然界で普通に存在しています。

余談ではございますが、全ての菌が人間に取って有害なものでは無く、お酒、チーズ等食品に活用されているものもございます。

菌の種類によっては、人の病気に起因する物も多く、特殊清掃前には消毒が必要となって参ります。弊社は、クラインアントやスタッフの健康を守る義務が生じる為、時間を費やし消毒を行っています。

2 臭いの除去(家財の搬出)

臭いは臭気源だけに留まらず気体となり室内のあらゆる物に付着しています。以前にも記載しておりますが、臭気源(汚染箇所)の周りから家財等の汚染物質を搬出してゆかなければなりません。臭気を広げない為です。ここが遺品整理と大きく異なる一因です。

遺品整理は有る程度、施工効率を優先して家財搬出を行う事ができますが、特殊清掃の場合は「臭気拡散」「汚染源の拡大予防」を優先して施工を行わなければならない為、遺品整理より時間的なロスが多いのが現実です。

3 臭いの除去(臭気源の除去)

特殊清掃における次の工程として「臭気源」の確定が必要となります。臭気を鼻で感じ取る手法を取っている同業他社もいますが、前項で記載させて頂いた通り、人間の嗅覚は「順応」してしまいます。つまり長時間、特殊清掃現場にいると嗅覚が鈍くなってしまいます。「臭い」を感じ取る事が鈍くなると言う事となります。

弊社は、「体液可視剤」や赤外線を利用した「水分検知器(体液)」を使用して浸潤範囲の特定を目視できる状態を作り施工に入ります。

臭いの除去(家屋内構造)

特殊清掃では、体液の浸潤度や、その状態(カビが繁殖)において、床板や壁(石膏ボード)の切除、解体が必須となる場合があります。そのケースとしては体液が大量に「付着」や「浸潤」が確認できる場合に限ります。

一般的に室内のクロスは「石膏ボード」に貼り付け使用しています。クロスや石膏ボードも通気性の良い素材となっている事から、揮発した体液やガスが石膏ボードに浸み込みます。弊社では安易に切り取り(解体)施工は行いません。現状復帰費用が増える為です。石膏ボードの消臭は1回の消臭施工で除去できる事が少ないのが現実です。施工方法も色々ございます。敢えてここで申し上げるとすれば「化学」の応用を活用しますが、多くの場合1日では除去できません。また、木材も同様です。

また、時間をかけ慎重に施工しなくてはならないのが床下です。床板下は予想や予測が付かない水道管や排水管、ガス管や電気配線などが複雑に、なっているケースが有ります。そこを不用意に「電動のこぎり」で切り取りを行い破損させると大変な事故や近隣迷惑に繋がります。床下の構造は基本的な形態がございます。例えば水道配管や排水管はキッチンや浴室、トイレ等に位置により、ある程度の各配管の位置予測はできますが、そうで無いケースも少なく無いのも現実の特殊清掃です。

「DIY」や変則的な配管がある物も多く、全ての現場で行うのが床板の「厚さ」からの12mm切り取りの作業です。12mm角の正方形の切り取りから床下の確認を行います。床板に貫通しない場合は2mmずつ深くしてゆきます。床板の厚さは異なりますが14mm前後が多く有りますが「万が一」のリスク回避の為、少しずつ深く切り取り行っています。また、余計な切り取りは現状回復工事(修復費用)において、クライアントに大きな経済的負担を掛けてしまいます。先ほど申し上げた様に弊社では、最小限の解体を目指した施工を行っているからです。

4 ・臭いの除去(施工方法・リフォーム型)

これも以前、お話をさせて頂いたと思うのですが特殊清掃には「解体型」「現象対応型」「原因対策型」と3タイプが存在します。特にリフォーム会社が行っている特殊清掃は、むやみやたらに解体する業者も散見されるように思います。これは、明らかに私の主観ですがリフォーム業者の特殊清掃の場合は、体液可視剤などを使用せず、「怪しい物(臭気)は全て撤去」という様に効率化を優先し現状回復費用も売上試算にいれ施工している様な業者も多い事を耳にします。。

5 ・臭いの除去(現象対応型)

現象対応型の施工方法は遺品等の搬出後に消臭剤を噴霧とオゾン燻蒸を行い引き渡す工法です。オゾン臭は強くオゾン燻蒸後は腐敗臭よりも強い臭気がある為、オゾン燻蒸後に施工完了引き渡しを行う業者を指しています。特殊清掃は「臭気源」の排除と「臭気感染と思われる」物質を事前作業として行わなくては臭気を絶つ事はできません。

前項で申し上げた通り、複数の工法を織り交えながら、初めて成立するのが特殊清掃です。「たんぱく質」の臭気除去に次亜塩素酸が一般的には有効とされていますが、人間の体は「たんぱく質」だけではなく「油脂成分」や「アンモニア」も有ります。同一の薬剤一つで消臭できないのが「特殊清掃」です。

ちなみに「オゾン燻蒸を利用して」の消臭方法はリスクベネフィット社が特許権を所有しています。ある程度の水準に満たない業者はライセンス契約を締結する事ができません。

弊社は、ライセンス契約を広島で唯一、取得できている業者です。ただ、科学も日進月歩しいる事からも弊社では「オゾン燻蒸」を利用しない「環境に優しい」植物性由来の消臭方法も習得していますがオゾン燻蒸施工と同様に時間を要します。よって工程1日での施工は現在における国内最高水準の特殊清掃業者が施工を行ったとしても不可能と考えられる工程であり。その工期自体があり得ない物と判断しています。

6 ・臭いの除去(原因対策型)

おこがましい傲慢な言い方を申し上げる事になると思いますが、特殊清掃業者の多くが「リフォーム型」「現象対策型」です。前項でも述べさせて頂いた通り特殊清掃は「繊細で複雑」な施工となります。原因を解決しない限り臭いは消えません。特殊清掃を他業者では兼業でされている会社も多く感じていますが、兼業で出来る程、甘い仕事ではありません。特殊清掃は文字通り「特殊」です。原因の対策さえ行えれば臭いは自然となくなる物と考えていますが、それには多数の工法や薬剤の化学的な応用を行いつつの施工と、繰り返しの臭気チェックが必要となります。

7 様々な特殊清掃業者の施工費用

特殊清掃を行う上で発生してくるのが「現状回復費」です。皆さん、どうでしょうか?例えば特殊清掃を同じ水準で施工を検討する上でA社よりB社の方が安価な場合、皆さんはB社を選択されると思います。私も「そうする」と思います。

ただ、現状回復費がA社が安価でB社が高額な場合はどうでしょうか?多くの方の場合は「特殊清掃費用」+「現状回復費」=選択結果となると思います。その様な考え方も含めた業者選定を検討して頂く事が出来ればリーズナブルな施工業者選定の結果となると考えています。

また、現象対応型業者の典型的な例として以前にもお話させて頂きましたが「オゾン燻蒸」1日当たり○○円等の価格設定している業者です。この手の業者の多くはファーストコンタクトで「臭いは薄くする事はできる」「臭いは完全に取り除く事は難しいかも?」ワンルーム等の「FRP」に浸み込んだユニット(浴槽等)に臭いは取れない等の発言も多いのが特徴です。{FRP}も臭いを取る事は可能です。ただ、特別な薬品を持ち合わせて無い限り、かなりの時間を要します。ほとんどの業者の多くは最初から「消臭できない」を告知し逃げ道を作っている事が明白と考えています。当然、リスクベネフィット社とのライセンス契約も締結しておらず、自社の消臭技術の未熟さによりオゾン燻蒸を繰り返す事により収益を上げる事を目的としクライアントが根負けする(費用がかさむ為)結果となります。皆さん、特殊清掃に「完全」「一部」消臭は無い事をお伝えしていますが、スキルが低い業者程、この価格設定を行っている事も多く短時間での施工を提案していますので、ご注意頂ければと思います。

8 特殊清掃における困難案件発生の場合

弊社は、どんな死亡現場でも必要最小限の解体で特殊清掃が行えると申し上げていますが、

例外も有ります。FRPの浴槽での「練炭自殺」です。そもそもFRPはグラスファイバーをコーティングして製造されています。グラスファイバーは文字通り、ガラス繊維を使用していますが、FRPのコーティングは一酸化炭素と熱により化学反応を起こし表面劣化が発生します。そこに入り込んだ臭気が付着してゆきます。除去する事は非常に困難です。先般も「新薬(企業秘密)」を使用し2週間施工を行いましたが、最終的にはユニット一式を撤去する残念な結果となりました。まだ、国内で練炭自殺(ユニット内)の特殊清掃で「現状有姿(ユニット解体を行わず)」をベースとした特殊清掃に成功した業者がいない事も現実です。以上の様に、残念な結果となりましたがレストレーション(現状復帰)を目的とした特殊清掃には時間が必要になる事も多く短時間で施工するのは困難と言う事を御理解頂ければと思います。

工期についてまとめ

どんな死亡現場で弊社が特殊清掃を行ったとしても最初のイメージ通りに工程が進むのは3件中1件です。これは日本で一番と言われる業者も「そうです、一緒です」申していました。

施工途中で様々な手法を変え対処しながら臭いと戦っています。

臭いは「僅かなエラー」で戻ってきます。特に冬時期は気温が低い関係もあり「臭い戻り」が確認しにくくファンヒーター等の暖房器具を使用し「臭気チェック」を行わなくてはなりません。よって「臭いが消える」までに時間を多く費やす時間も多く成る為、弊社では夏場で2週間、冬場で3週間(いずれも修正施工を含みます)を要する事となります。

以上の事から、業者により工法や工程が異なりますが、特殊清掃を行う上において時間(工期)は必要となります。

工期1日の業者

室内消毒、家財の搬出から臭気源の特定、ならび洗浄、オゾン燻蒸を行うので有れば燻蒸後5時間はスタッフの健康被害の為、入室が行えない事からも弊社のスペックでは対応が行えないものと考えています。

工期3日の業者

ワンルームで有り尚且つ弊社のシュミレーション通りに施工するのに最短で3日間はようします。ただ、責任を持って「臭気確認」を行うにはスケジュール上、困難なのが弊社の見解となります。

最後に特殊清掃業者と「特殊清掃を装った業者」の見分けの仕方をお伝えさせて頂きます。

9 特殊清掃業者の見極め方

まずホームページを閲覧してください。

使い捨てシューズカバーを装着しているか?

臭気拡散防止の為、必須です。

医療用、使い捨ての「ゴム手」もしくは「プラ手」を使用しているか?

特殊清掃を理解していない業者の多くは作業用グローブの使いまわしやキッチンゴム手袋等を使いまわしされています。臭気源に触れたグローブでクロスや柱など臭気源で無い物を体液の付着した手で触れてしまうと洗浄箇所が増えると共に臭気源の拡散に繋がります。ちなみに弊社ではゴム手は一現場では最低200以上が必要となります。

コンクリートを斫って無いか?

これも以前にもお話させて頂いていますが、10年以上前の施工方法です。確かにコンクリートを撤去する作業が必要な場合も有りますが、それはコンクリートスラブに体液が浸潤したケースに限定された物であり、通常のモルタルに浸み込んでいるケースで体液を斫って除去する事は現代の特殊清掃技術や工法では、あり得ない手法です。また、斫った後にモルタルを流し込み消臭塗料でコーティングをする?そんな業者もいます。

物理的には考えにくい施工方法です。特殊清掃を行う上において体液を「斫り」によって除去できたので有れば消臭塗料によるコーティングは科学的にも物理的にも、あり得ません。

以上の事を考慮しながら、特殊清掃業者の選定を行って頂ければ「不当業者」の撲滅と皆様の利益確保(財産)ならび特殊清掃業界の健全化による発展に繋がるものと願っています。。

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