特殊清掃における「臭度」「臭度測定器」について

お客様から、「あぐり」では臭気測定器を使用しないのですか?の質問を頂く事も数多くございます。

そもそも「臭い」とは何か?からクライアントに御説明させて頂いています。

人は各大脳半球前面下に突き出ている嗅葉により臭いを感じ取っています。

以前にもブログに一部、掲載しており重複する内容もあるかとは思いますが改めて明記させて頂きます。

1・「臭い」は「気体」であり「臭期源(主に水分)」から人が感じ取る物で、心地良い臭いも有れば不快な臭いもあります。

臭いは少量でも水溶性分子であれば臭気を強く感じ取る事ができますが、水性膜等に物質で覆われている場合、感じ方は少なくなります。

また、鉄製品などは臭いの付着は安易に除去できますが、凹凸の物質、「木」「ゴム」「布」「コンクリート」等は性質上、臭いが付着しやすく取りにくい材質と考えています。

2・人の嗅覚は微量の化合物の臭いでも約1000万分の1gまで臭いを感じ取る事ができると言われています。

本来、女性の方が男性より臭気感覚が強く、加齢とともに男女とも臭気感覚が低下すると言われています。

3・孤独死現場等を目視された方などはトラウマ現象として、「その経験のシーン」を思い出し「臭気過敏症」「心理的臭気」

これは業界用語では「記憶臭」とも呼ばれる物がフラッシュバックしてくる方もいらっしゃいます。

4・「特殊清掃」は「孤独死」「ペット臭」「生ごみ臭」「カビ臭」「たばこ臭」など様々なリクエストがございます。

臭気は複雑です。孤独死の場合であれば、「たんぱく質」ペット臭であればアンモニア等、使用する薬剤はシーン毎に異なって参ります。また、それぞれのシーンで雑菌や微生物の繁殖により空気中に悪臭を放ちます。この雑菌や微生物は気温20℃~30℃が最も繁殖しやすい環境となります。また、湿度によっても大きく異なって参ります。

5・臭気測定器は弊社も持ち合わせています。

ただ、現在は使用する事は有りません。まず臭いには「基準」が有りません。例えば距離で例えれば「㎞」「m」「㎝」重さで言えば「t」「㎏」「g」等、音では「デシベル」と細かくございます。ただ、臭いの強度を測る物差し自体が存在していません。

また、弊社でも何度も何度も臭気測定実験を繰り返して参りましたが、同じ室内環境において測定しても日々、測定数値に大きな「ブレ」が生じます。これは、毎日が同じ「室温・湿度」では無い事や、「全ての臭い」を拾う事が大きな要因と考えています。例えば新しい「カーペット」や「クロス」等も独特の臭いも有ります。香水や食品の臭いもそうです。臭いの強さをしる上において「人が感じる心地良い臭い」「不快に感じる臭い」その両方を感知する為です。機械メーカーも日進月歩で技術は進んでいるとは思いますが、「不快に感じる」臭いだけを数値化するのは今、現在では困難では無いかと考えています。

6・孤独死現場等で散見される環境が「湿気」による「カビ」です。

腐敗臭とは明らかに異なります。カビの臭いを除去するのにも臭気測定器は使用しません。ブラックライトや赤外線を使用した機器を利用し水分量を目視確認してゆく事が、カビの除去作業において最も効率的だからです。

7・ペットの消臭の場合は、ペットの種類や飼育頭数によっても臭いは大きく異なります。

犬でも「オスか?メスか?」によっても消臭箇所が違います。オスの場合は足を上げオシッコをします。従って壁面も施工対象になります。メスは両足を着いたままオシッコをします。彼らにとって「オシッコ」は不快な物では無いようですが、人からみるとそうでは有りません。

また、皆さんに知っておいて頂きたいのが猫のオシッコです。猫のオシッコは基本酸性ですが乾燥するとアルカリ性に変化します。また、湿気や水分を吸収すると酸性にもどります。これはアルカリ塩と言う物質であり、尿塩とも呼ばれています。よって同じ環境下においても湿度の高い時期(梅雨時期)と乾燥の強い時期(冬場)では人間が感じる臭いの強さも大きく異なってまいります。

8・俗に言われるゴミ屋敷や猫屋敷で生活されている方々がいらっしゃいます。

また、以前にも記載させて頂いたかも分かりませんが、痴呆に罹られている御夫婦の相方が亡くなり腐乱状態で2~3カ月一緒に生活されていた方もいらっしゃいました。

周りの方々は「よく生活できる?」と首を傾げられる方も多く、お見かけします。これは徐々に臭いが上がって長時間、過ごす内に順応しているからだろうと想像しています。

9・火災現場の消臭においてもそうです。火災現場で臭気測定器を使用する業者を聞いた事が有りません。

火災現場では火災により「食物などのたんぱく質」「木材のすす」「プラスチック」「繊維」「浴槽に使用されているFRP」等の煙や灰が混ざり合い化学反応を起こしています。この様なケースで使用されるのが「成分分析機」です。成分を分析し、その部屋毎に異なる物質に対して、訓練を受けたスタッフにより適切な薬剤、ツール、機材を使用し対応しなければ、ならないからです。

10・以上の事から弊社では「臭気測定器」の使用は現在、行っていません。

人の感じる不快な臭いは現在の科学では人間以上判断が出来る物では無いと言う事をお伝え出来ればと思っています。

11・注意する点(業者選定)

全てのシーンに当てはまる事では有りませんが「臭気測定器」の数値は急激に700や900を表す場合も多くございます。特殊清掃依頼の多くは「緊急性」を求められ、平静を保たれている様でも心理状態は半ばパニックに陥っている方が多いと感じています。そこに急激な数値上昇を見せられると冷静な判断が出来なくなるものと考えます。

臭気測定器には基準が有りません。参考になるとすれば臭気源が発生する前の数値が同じ機械、時期、温度、湿度が把握できていればの仮定です。現実的には不可能とも考えています。

12・対応

孤独死について限定すれば原因は簡単です。たんぱく質や脂質の腐敗による分解(液状化)による雑菌、微生物の繁殖が起因するのが臭いです。これは汚染区画の撤去を行いクリーニングを行う事により「臭い」の90%~95%(基準は有りませんが私の感覚です)は除去できます。これは断言できますがオゾン燻蒸機の使用だけでは決して臭いの除去は行えません。

(施工方法については、企業秘密とさせて頂きます)

一つの施工方法だけでは解決できないのが消臭です。複数の施工方法を交えながら行う事により消臭は成立します。

13・臭気確認

御説明させて頂いたように臭いは「温度」「湿度」によって感じ取りやすくなります。夏場は、夏場の温度・湿度により確認できますが冬はそうはいきません。冬場(低温時20℃以下の気温)に特殊清掃業者へ依頼を行われた場合は、家屋内を温める機材を持ち合わせているか?は確実に行ってください。

また、皆様で行える臭気確認はファンヒーターをそこで使用して室温を25℃以上にして下さい。また、その状態で市販されている洗剤や消臭剤の空容器に水を入れ室内を噴霧してください。

臭い残りが有れば、そのひと手間で臭気確認が行えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です