セルフネグレストについて

セルフネグレストとは?

セルフネグレストという言葉をご存じでしょうか?

高齢化が進んで一人暮らしをする高齢者が増えたことにより、セルフネグレストのリスクを抱えた人が増加してきているのですが年齢に関係なく生きる気力をなくしてしまった場合は誰でもセルフネグレストに陥る可能性があるので注意が必要です。

今日は、セルフネグレストについていろいろお話させていただきます。

 

・セルフネグレストとは?

セルフネグレストとは、病気やショックな出来事や些細なことが原因で自分のことに関心がなくなり、自分自身の健康や安全に対して無頓着や無関心になりケアができなくなる状態のことです。自分自身のケアができなくなれば、食事やお風呂などがどうでもよくなって、日常生活を当たり前に送ることが困難になり、住環境の悪化を招いてしまいます。最悪な場合、ゴミ屋敷や孤立死に至ることもあるのです。

 

では、セルフネグレストにはどんな特徴があるのでしょうか?ここからは、セルフネグレストの特徴についてご紹介していきます。

 

・衛生状態の悪化

自分をケアする意識がなくなるため、清潔に保つことができなくなります。お風呂に入る気が起きず入浴しないので、日々の汗や汚れが溜まりどんどん不潔な状態になってしまうのです。家から出なければ、着替えをするのも面倒くさくなりあまり着替えもしなくなるので、極端に汚れている衣類も気にせず着用したままであったり、失禁しても放置したりすることがあります。

 

・自分で健康管理ができなくなる

自分の健康にも関心がなくなり栄養のある食事もまともにしなくなります。病気を治療中であっても病気を治したいという意識がなくなり、治療を中断したり服薬をやめてしまうこともあります。その結果、病気が悪化してしまうことが多くなります。

 

・家の掃除や片付けができない

身の回りの片づけや掃除ができないので、部屋が散らかりゴミを捨てず散乱した状態で、どんどんゴミが溜まっていきゴミ屋敷状態になることもあります。

ゴミ屋敷状態になると、悪臭が発生したり害虫がわいてしまうので近隣に迷惑をかけてしまうこともあり、場合によっては近隣トラブルに発展してしまう可能性もあります。

 

セルフネグレストに陥ることで懸念されるリスクもあります。

・家族や友人から孤立する恐れがある

外出が減り誰かと会話することも減ってくるので、ますます他人と関わる機会がなくなります。

食事・入浴・洗濯・掃除に関心がなくなれば、身だしなみを整えることができなくなり、それによりますます家族や友人が離れていく孤立してしまう悪循環に陥ってしまいます。

 

・孤立死の可能性がある

周囲から孤立してしまうことに加えて、認知症やうつ病などの精神的な疾患が原因となる場合が多く症状が悪化することで、日常生活が送れなくなり命の危険にさらされる可能性があります。

 

セルフネグレストになる原因はさまざまですが、よくある原因についてお話させていただきます。

 

ライフイベントや不慮の出来事によるショック

いつかは必ずしも起こる配偶者や親しい家族の死、病気、リストラなどのショックな出来事がきっかけでセルフネグレストに陥ることも少なくありません。配偶者を失うことで一人で生活を維持する生活力が不足しているにも関わらず、人の世話になりたくないというプライドや人に世話になるのが申し訳ない遠慮や気がねから支援を受けづらいということが考えられ、それにより社会からの孤立へとつながってしまうのです。

 

・身体機能の低下する

事故や病気、加齢により身体機能が低下して、今まで問題なく過ごせていた日常生活が送れなくなることで精神的苦痛を感じて、だんだん希望や興味が薄れ意欲がなくなり生活に対する意欲をなくしてしまうことがあります。

また加齢による身体機能の低下は認知症にかかるリスクが高くなり普通の生活を送りたくても満足にできない状態が続くことでセルフネグレストへ発展してしまうこともあります。

 

・認知症・精神疾患などの病により判断力が低下する

認知症や統合失調症や妄想性障害、うつ病などの精神疾患がきっかけでセルフネグレストに陥ることもあります。

病状が悪化してもあまり自覚症状がなく病院の受診を嫌がるので、命にかかわるような重篤な状況になっても気がつかないまま、孤立死に至ることもあります。

 

・社会・人間関係が希薄化する

定年退職や配偶者との死別、熟年離婚やどもの巣立ちなどにより、今まであった人との繋がりが少なくなってしまうことで、社会との接点がどんどん希薄になりセルフネグレストを引き起こしやすくなります。特に配偶者との死別や離婚は精神的に大きなダメージを受けるので生きる活力や楽しみが見出せなくなって次第に身の回りのことがどうでもよくなりセルフネグレストに陥るケースもあるようです。

 

・経済的に困窮する

経済的に困窮して、食品や日用品を購入するのが難しくなると購入する意欲が低下したり、趣味を満足に楽しめないことで意欲や気力が失われてしまいます。

国民健康保険などに未加入の場合が多く、医療費が全額自己負担となり支払うことができないため、病気やケガをしても病院に行かずに放置してしまうこともあります。それにより、身体能力の低下に繋がりセルフネグレストが進行する要因となります。

 

・家族から虐待を受けている

家族から身体的・精神的に虐待を受けていることが原因でセルフネグレスト状態になってしまうケースもあります。身近な人に日常的に暴力や暴言を受け続けているとだんだん生きる気力がなくなりセルフネグレストを引き起こしてしまうのです。家族から虐待を受けている場合、周囲になかなか助けを求められないので誰にも気づかれないまま進行してしまうことがあります。

 

・原因がわからない

上記のように原因がわかる場合もありますが、中には原因がわからないこともあります。

また男性より女性の高齢者の方がセルフネグレストに陥りやすいと報告されていますが、セルフネグレストと性差との関係性は明らかにされていません。

 

ここからは、セルフネグレストの支援や治療、対処法についてお話させていただきます。

 

・本人の気持ちや価値観を尊重する

人との関わりを拒み自分自身もどうしたいのかわからないケースも少なくありません。他人に対して心を閉ざしているため簡単には話してくれないかもしれませんが、本人を否定するのではなく寄り添い気持ちを理解することで少しずつ心を開いてくれることもあります。

また、無力感や自分を責める感情にさいなまれないように本人ができていることを認めて自信をもってもらえるように支援していきます。

 

・生命のリスクを明確に伝える

医療・福祉従事者が生命のリスクが高いと判断しても、本人は危険を感じていないことがあるので、脈拍・体温・血圧の値を示すなどして、正しい知識や情報を提供し深刻さを伝えたうえで本人がどうしたいのか意思を確認しましょう。

 

・地域のサポートを活用する

全国の自治体に設置されていて誰でも無料で相談できる地域包括支援センターを活用されることで最善策を見出したり、心の負担が少しでも減らせることができます。主に高齢者の生活を支援するために介護・医療・保険・福祉など健康面や生活全般の相談を受け付けている総合的な相談窓口でセルフネグレストの方が受けられるサービスや制度について案内してくれます。

 

・介護サービスを利用する

介護認定を受ければ、介護保険により訪問介護やデイサービス、訪問入浴などのサービスが受けられるので、病気の治療や身の回りのことができなくなっている方は介護サービスを利用されると良いでしょう。介護認定を受けていない高齢者でも高齢者住宅などの施設を利用することは可能で、栄養のある食事をとって他の高齢者の方と交流することでセルフネグレストから抜け出せる可能性があります。介護認定については、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

 

・部屋を掃除して片付ける

部屋が散らかっていればますますやる気もなくなるので、まずは部屋を片付けるところから始めましょう。家族や親族で片付ければ費用はかかりませんが、自分たちだけで困難な場合は、ゴミ屋敷の片づけや不用品回収を行ってくれる専門業者への依頼を検討してみてください。

 

・家事代行サービスを利用する

自分で家事を行うのが難しい場合は、家事代行サービスを依頼することで身の回りを整えることができます。生活環境や衣服がきれいになり、清潔で健康的な状態になることでセルフネグレスト状態の改善がみられることもあります。

 

・適切な治療を受ける

認知症や精神疾患がある場合、病気が進行するにつれて判断力や身体能力が低下してセルフネグレストに陥る可能性が高いので、病気が疑われる場合は医療機関の受診に付き添うなどして、速やかに病気の治療が受けられるようにサポートすることも大切です。

病院で医師に相談することにより適切な処置が受けられ、症状の緩和や進行を遅らせることができます。

 

セルフネグレストに陥る前にはいくつかの前兆があるので、家族や周囲の人に下記のようなポイントが見られたら、気にかけたり病院の受診を検討してみてください。

 

・傾向として他人を家に寄せ付けない
・室内を見られないような行動をとり部屋に人を入れない
・カビや腐敗した食品が散乱し異臭や消毒など特殊清掃をようする場合もある。

・物が捨てられず、生活に支障をきたすほど部屋中にゴミがあふれている

・家の中が掃除されずに汚れていたり、庭などが手入れされず荒れ始めている

・窓や壁に穴が開いていたり、生活するのに不便な環境に住み続けている

・何日もお風呂に入らない、歯磨きや散髪をしない、ひげを剃らないなど清潔感がない

・いつも同じ服を着ていたり、汚れても服を着替えないなど身だしなみに気を配らない

・失禁しても対処せず放置している

・病院に検診や受診をしない、治療や介護を拒否する

・人との関わりを拒否して社会から孤立している

・確認しないので郵便物が溜まっている

・金銭管理ができないため、家賃や公共料金を滞納している

 

最後にセルフネグレストの予防方法についてお話させていただきます。

・本人が本音を話せる環境をつくる

本人が辛いことを我慢して本音を話せる場がなくなれば、だんだんと心を閉ざし日常生活を送る気力がなくなってしまう可能性があります。家族や身近な人は、本音を話せるような環境づくりを心掛けるとともに、もしセルフネグレストになったとしても進行する前にカウンセラーなどに相談できれば改善することもあるので、本人が相談に行けるようにサポートされると良いかもしれません。

 

・周りが気にかけ、変化に気づきやすい環境をつくる

孤独な生活がセルフネグレストを引き起こしやすいので、一人にさせない、一人にならない環境づくりが大切です。社会との関わりをつくることを意識して、一人暮らしの場合は見守りサービスを利用するなど、何かあっても気づいてもらう仕組みをつくることが大切です。

 

 

まとめ

 

セルフネグレストについていろいろお話させていただきましたがいかかでしたか?

セルフネグレストは、現在少高齢化が進み一人暮らしをする高齢者が増えたことでリスクを抱えた人が増加してきているのですが、年齢に関係なく生きる気力をなくしてしまった場合は誰でもセルフネグレストに陥る可能性があるので他人事ではないのです。

しかし、早めに対処すれば問題はそこまで深刻化しません。誰もがセルフネグレストに陥る可能性があることを念頭に入れておいて、問題が起こった場合はすぐに対処できるようにしておくことが大切です。

身近な人が孤立しないよう見守ったり、もしセルフネグレストが疑われる場合には、相談窓口や役立つサービスを利用しながらサポートして少しでもセルフネグレストになる方が減少してくれればなと思います。

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