セルフ・ネグレクトとは

まず【ネグレクト】とは何でしょうか? ネグレクトは「保護者や介護者が、子どもや高齢者に対して育児や介護を放棄すること」を指します。 次に【セルフ・ネグレクト】とは何でしょうか? 直訳すると「自分自身への放棄=自己放任」となります。自分自身や他者への関心がなくなり、引きこもってしまうことが大半を占めます。

セルフ・ネグレクトの典型例

高齢になると体力・気力が低下し、思うような生活が送れなくなっていきます。 腰や膝が痛むことも多くなり、高い所の収納スペースを利用することが難しくなります。 そして時間の経過とともに部屋が物で溢れてきます。次第に友人や親類を呼ぶことが億劫になり、部屋はさらにゴミ屋敷化していきます。 ゴミを捨てなくなるので部屋は腐敗臭が充満します。郵便受もチェックしないので、郵便物が溜まり始めます。 この頃初めて近所の人や民生委員が異変に気づくパターンが多いのです。結果的に関係者立会いのもと、警察が部屋に入ることになります。 誰にも看取られることなく孤独死となったご遺体が発見されることも多く、時折ニュースで報道されることもあります。 一方、不衛生な住環境で生活を続ける住人と対面することもあります。 まともに食べていないので痩せ細り、髪や爪は伸び放題。 このまま放っておけば間違いなく孤独死してしまう状況です。孤独死の80%以上はセルフ・ネグレクトが原因だといわれています。

セルフ・ネグレクトの特徴

①体や服装が不衛生である ・前述のように髪や爪が伸び放題になっていたり、入浴しないため悪臭を放っているケースが多々あります。また、洗濯もしないので服が汚れたままだったりシワだらけの場合も要注意です。 ②治療の放棄 ・以前は通院し薬を服用していても、セルフ・ネグレクトに陥ると極端に外出することが減り通院しなくなります。治療を放棄してしまうので薬が飲めなくなり、不衛生な環境のもとで更に病気を悪化させてしまいます。 ③お金の管理 ・部屋がゴミ屋敷化してしまうと、印鑑や通帳もその中に埋もれている可能性があります。本人もそのことは自覚していても探そうとはしないのです。 結果的に預貯金の出し入れができなくなるケースがあります。家賃や公共料金が引き落とされず、大家さんが不審に思い訪問してみると孤独死の現場に遭遇することが多いのです。 ④不衛生な環境 ・部屋を占領したゴミは、やがて外にまで溢れるようになってきます。 ネズミやゴキブリ、ダニなどの害虫は近隣住民にも害を及ぼします。生ゴミや残飯、汚物を捨てないままなので、完全に撤去しない限り解決しない問題です。 ⑤排泄物の放置 ・特に認知症が進んでいる高齢者に多い特徴です。 排泄したこと自体を忘れてしまうことが原因の一つです。また、うまく排泄できなかった失敗を恥ずかしく思い、介護用オムツや下着をどこかに隠してしまうケースもあります。どこに隠したか忘れてしまうので悪臭を放つことになります。 認知症でなくても、身体機能が低下するとトイレが億劫になってきます。身近にある洗面器やペットボトル、バケツ等に排泄することもあります。 ⑥周囲からの孤立 ・他者との関わりを拒絶してしまうと周囲から孤立します。 周囲の人たちも気にはしますが声を掛けづらく思っているものです。その間も部屋はゴミで溢れかえり悪臭を放ちます。 いずれ周囲の人たちとトラブルになり、ますます孤立してしまうのです。

もしもゴミ屋敷化してしまったら

セルフ・ネグレクトに陥った住人は、ゴミをゴミだと認識していません。 片っ端から捨てようとすると強く抵抗します。 一度でもこのような状況になってしまうと警戒心が強くなり、今後の対応が難しくなります。時間がかかっても一つ一つ確認しながら分別することが重要です。 ゴミ屋敷を清掃する専門業者も、決して独断で処分するようなことはしません。必ず住人の気持ちを尊重するものです。その安心感が住人の心を開かせることにつながるのです。

まとめ

セルフ・ネグレクトであることを自覚してもらうことは非常に難しく、自覚したからといってゴミ屋敷問題が解決するわけではありません。 まずは大きな改善を目指すのではなく、本人の気持ちに寄り添いながら小さな改善を積み重ねるイメージを持つことが大切です。

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