親の遺品整理の流れを知ってその時に備えよう。

遺品整理に関する知識は持っておくべき

遺品整理に関する知識は、できれば親が亡くなる前に身につけておいた方が良いでしょう。その理由についてこれから説明していきます。

親が先に亡くなる可能性が高い

年齢的な問題で、子より先に親が亡くなる可能性の方が高いというのが理由の1つです。親が亡くなった場合、遺品整理は相続人になる配偶者と実子が行わなければなりません。

遺品整理の際になんの知識もないまま取りかかると、相続人同士でトラブルになることがあります。いざという時に慌てることがないように、遺品整理の知識はあらかじめ持っておいた方が良いでしょう。

死後の手続きは非常に煩雑

身内が亡くなったら悲しみに浸る余裕もなく、やるべきことが山ほどあります。

死亡診断書の受け取りや、死体火葬許可証の受け取り、市町村への住民票抹消届や世帯主変更届の提出などの公的な処理にはじまり、ガス・水道・電気会社への解約申請、土地の名義人の変更や葬儀の手配などの名義人変更の手続きもやらなければいけません。

これらの手続きには死亡後一定期間内にやる決まりもあります。その時になって慌てないように、あらかじめ知っておきましょう。

心の準備ができる

故人の死のショックが大きく、何もできなくなってしまう人もいます。ところが役所の手続きや遺品整理には法的に期間が定められていることが多く、ようやく心が落ち着いてきたから何かしようと思っても、手遅れになっていることも多いのです。

そうならないように、あらかじめ心の準備をしておくことが大切です。

遺品整理の知識を得て、ある程度のシミュレーションを行うことで、故人に死に対する心構えを、生前のうちに持っておきましょう。

遺品整理の目的

遺品整理をただ死んだ人の物を処分することだと思っている人もいます。取っておかなければならないもの、価値ある物を他の人に無断で捨ててしまい、トラブルになるケースも少なくありません。

そうならないためにも、遺品整理を何の為にするのかを知っておきましょう。

故人の持ち物を整理し偲ぶ

交通事故などの突然の死だと、親しかった人にとってその人の死を実感できないことがあります。

故人の持ち物を整理することは、遺族にとって故人の死を実感すると共に、死を偲ぶために必要な作業でもあるのです。遺品を整理しながら、生前の故人に思いを馳せるのも良いでしょう。

遺品整理は、故人の死と決別するための過程の1つでもあります。遺品整理をしながら、故人に対してしっかりと別れをいっておきましょう。

相続や形見分けを行う

相続や形見分けも、遺品整理の目的の1つです。資産価値のある品物や土地などは、相続人同士で分配する必要があります。特に土地などは分譲できないケースがあるので、相続人同士でどのように相続するのかをしっかり話し合う必要があります。

勝手に処分したり持ち帰ったりするとトラブルになるので、どのような遺品であってもきちんと相続人同士で話し合いを行いましょう。

また、故人の遺品の形見分けも、遺品整理の際に行いましょう。故人と親しかった人に形見を渡します。遠方にいて直接渡せない人には郵送する方法もあるでしょう。後々のトラブルにならによう、相続や形見分けをきちんとと行っていきます。

不要物を処分する

故人の遺品をすべて取っておくことは難しいでしょう。遺品や遺産を残して、不要な物を処分する必要があります。不要品の処分は慎重に行わなければならないので、注意が必要です。

なぜなら、処分しようと思っていた物の中に価値がある物の場合や、他の人の所有物を借りているケースもあります。生前に形見分けを約束していた物があるかもしれません。そのため、不要品の処分については確認をとった方が良いでしょう。

また、同じ家に住んでいたからといって勝手に遺品を処分するケースがありますが、これはNGです。どんなに親しいからといっても、法的に相続人でなければ遺品を整理する権利はありません。まずは誰が遺品整理を行うのかを明確にして、その上で他の人の合意を得て不要品を処分していきます。

遺品整理は誰が行う?

遺品整理は誰が行うのかはご存じですか?誰が遺品整理をするかは、遺族同士のトラブルでも多い原因です。第三者が勝手に遺品を処分すると、法的に罰せられるケースもありますので、遺品整理をする権利のある人は誰なのかを、明確にしておきましょう。

通常は相続人が実施

遺品整理は故人の所有物であり、一緒に住んでいた同居人であっても、生前どんなに親しい間柄であったとしても勝手に整理することはできません。

遺品整理は、原則として相続人が行います。相続人は、配偶者と実子が最優先で、次にその孫や故人の親、最後に故人の兄弟となります。故人に実子がいる場合、親だからと言って勝手に遺品整理ができない点には注意しましょう。

稀にではありますが、相続人が把握していなかった故人の親族や子供がいる可能性もありますので、相続人の確認は慎重に行わなければなりません。

費用も相続人が負担する

不要な物の処分費用や、相続税、家の解体費用や債務の返済など、これらの相続にかかる費用はすべて、相続人の負担となります。

賃貸に住んでいる場合は、家賃の滞納があったらその支払いや、部屋の原状回復についても相続人が行わなければなりません。相続人が複数いる場合、各相続人で費用は分担して負担する形になります。

また相続財産管理法人で遺品処分をする際には、申請にかかる手数料や、相続財産管理法人を選ぶための予納金は、申立人が納めなければなりません。

遺品整理はいつ行うべき?

葬儀の前に行うのか、それともしばらくして落ち着いてから行うのか、遺品整理のタイミングで悩む人は多いようです。遺品整理を行うおすすめの時期について解説します。

気持ちの整理ができたタイミングで実施

一般的な遺品整理のタイミングとしては、四十九日や一周忌の法要に合わせると良いとされています。この時は親族が集まるため『形見分け』には最適なタイミングだからです。

ただし基本的には、気持ちの整理ができた段階での実施をおすすめします。

気持ちの整理が済んでいないのに無理に整理しようとすると、余計に気持ちが乱れてしまい手がつきません。

また、高齢者夫婦で片方に先に旅立たれてしまうようなケースでは、遺品を無理に整理した結果、残された配偶者が寂しさやストレスからうつ病を併発してしまった事例があります。

作業効率も重要ですが、前提として気持ちが整理できていることが大切です。

賃貸の退去など期限がある場合も

気持ちの整理が重要とは言っても、手続きに期限があるものは先延ばしにはできません。

例えば賃貸物件に故人が住んでいた場合、遺品整理を早めに済ませて退去しなければ、家賃がかかってしまうケースがあります。市営・県営住宅の場合は14日以内の退去が定められています。

借りていた物の返却なども延滞料が取られてしまう可能性もあります。

こういったケースがあるので、まったく着手しないというわけにはいきません。期限があるかどうかだけでも先に確認しておき、それまでに済ませるようにしていきましょう。

遺品整理の流れと注意点

遺品整理の流れと注意点について解説します。遺品整理は故人に関する作業の中でもっとも作業量が多く、そしてトラブルになりやすい作業です。くれぐれも慎重に行っていく必要があります。

価値のある物や形見を仕分け

処分に着手する前に、まずは分別を行っていきましょう。価値のある物は相続人同士で分配する必要がありますし、形見分けの品も選別しなければなりません。

この時、まずは相続人の選出を行うのが優先です。遺品の相続権は相続人にありますので、まずは誰が中心になって遺品整理を行うのかをはっきりさせておいた方が作業が早く進むでしょう。遺品の分配も相続人同士で話し合った方がスムーズに進みます。

処分から先に着手すると、捨ててはいけない物まで捨ててしまう可能性があるので注意しましょう。

不要物の処分

遺品の仕分けが終わってから不要品の処分に着手します。不要品の処分方法についても相続人同士で相談して決めましょう。

業者に頼むのか、それとも相続人同士で作業するのかも決めていきます。相続人が複数人いてスケジュールを合わせるのが難しい場合は片付け業者を利用しても良いかもしれません。その際の費用やオプションについても話し合いましょう。

特定の誰かに負担が偏らないようにするのも大切です。

遺族全員で行う

遺品の中には宝石や高級腕時計などの高価なものもあります。遺族全員で行い、故人の所有物を確認しながら作業を進めていきましょう。

そうしないと、誰かが勝手に持ち帰ったといった、あらぬ疑いがかかることがあります。今後の親戚付き合いを考えるなら、そういった不和の芽は摘んでおいた方が良いでしょう。

遺品をリスト化しておくといった工夫も、遺品整理を円滑にするのにおすすめです。

相続放棄したい場合の対応

相続する遺品が必ずしも有益なものとは限りません。

中には、借金をはじめとして相続したくない遺品も多くあるでしょう。そういった場合、相続を放棄するのが望ましいです。

ただし、相続を放棄する場合にやってはいけないことがあります。また、相続を放棄したにもかかわらず、管理責任を問われる物もありますので、ここではそういった相続放棄の注意点について触れていきましょう。

相続放棄する場合、遺品整理してはいけない

遺品に手をつけた場合、法的には相続することを『単純承認した』とみなされます。相続放棄ができなくなってしまうので、例えばアパートの管理会社から早急な遺品の処分や片付けを求められたとしても、相続放棄するつもりがあるのなら着手してはいけません。

手紙や写真などの資産価値として認められないものについては、法的には問題ありませんが、それでもトラブルを防ぐためには、相続放棄が認められるまでは遺品には手をつけないようにしましょう。また、相続放棄は原則、相続人になってから3カ月以内に手続きしなければいけないことも、覚えておいてください。

遺品整理が必要になるケースもある

相続を放棄したとしても、遺品に関しての責任が追及されるケースがあることは知っておきましょう。それは『相続を放棄した際に他に相続人がいなくなる場合』です。

民法940条には、相続を放棄したとしても、次の相続人が現れるまでは適切に遺品を管理することが義務づけられています。例えば相続するはずだった故人の家の塀が倒壊し、隣の建物に被害を及ぼしたような場合は、相続人がいなければ元々相続するはずだった人に、損害賠償が請求される可能性があるのです。

また、ゴミや腐敗臭が発生していて周辺住民から処理を求められるケースがあります。そうなった場合は、速やかに弁護士など専門家への相談をおすすめします。

こんな時は遺品整理業者の利用を検討

最近では、遺品整理の資格を持った片付け業者も増えています。次のようなケースは、業者への負担を検討しましょう。

心身の負担が大きい

生前親しかった人の遺品整理は、想像以上に精神的ストレスをもたらす場合もあります。また、遺品整理はかなりの体力・気力を要求される作業です。

そのため、遺品整理がまったく進まないというケースはよくあります。心情的に遺品整理がしづらい、また体力的に厳しい場合は業者への依頼を検討しましょう。

処分する物の量が多い

故人の家がゴミ屋敷化しているなど、処分する物の量が多い場合は業者への依頼を検討しましょう。

仕事でなかなか整理の時間が取れない、相続人同士で時間が合わないという場合も同様です。いつまでも遺品整理が終わらないと相続の問題などが片付きませんし、気持ちの整理もつかないでしょう。

遺品整理の資格を持った業者もいますので、頼めば的確に遺品と処分品を仕分けしてくれます。

費用はかかるかもしれませんが、まずは処分を優先しましょう。

個人情報を確実に処分したい

現代では個人情報管理が非常に複雑化しています。スマホやPCのデータや、ネット上で管理・登録しているサービスに残っている情報など様々な形があります。そのため、単純に持ち物を処分するだけでは個人情報を処分したことにはなりません。

個人では難しいネット上の情報も、業者に頼めば確実に処分できます。

親の生前に準備するのもおすすめ

遺品整理は大変な作業なので、親と相談して生前から準備をしておくと良いでしょう。相続についてもトラブルがないよう、あらかじめ話し合っておくことも大切です。

親と生前整理を行う

生前整理は親と共に行うことが大切です。

たしかに、子供からすれば、遺品整理は大変な作業なので、親が生きているうちにある程度やっておきたいという気持ちはあるでしょう。

しかし、親の立場からすれば自分の荷物を生きているうちに整理されていくのですから、あまり快く思わない人もいます。一方的に親の所有品を捨てていった結果、親の反発を招き、かえって片付けが進まなくなってしまったケースもあるので、あくまで現在は親の持ち物を整理するという前提でやっていく必要があるでしょう。

親の意向を確認できる

親と一緒に生前整理を行うことで、親の意向を確認できるのもメリットです。

形見分けとして誰かに残したい物をあらかじめ聞いておいたり、遺言書を作成してもらったりすれば、死後に遺族同士で遺品に関するトラブルを防ぐこともできるでしょう。

遺族としても「親の意向なら…」と納得しやすいはずです。親自身の気持ちの整理にもつながります。

実家の断捨離も実施

親が高齢化していると体力が衰えていて、実家が物でいっぱいということも考えられます。生前整理と共に、早めの断捨離も実施していきましょう。

実家にある物の中には、明らかに不要な物や、親が使っていない物もあるはずです。親と相談の元、実家を使いやすくする意味でも片付けに着手していきます。

親の物に対する思い入れが強すぎて、なかなか断捨離が進まない場合もありますが、一方的に捨てたりせずに、あくまで親の意向を汲んだ上で断捨離をすることが大切です。

まとめ

遺品整理は作業量も多く、何を残すか、遺品をどう分配するかなどで遺族でトラブルになるケースも多くあります。親戚付き合いは後々まで続くことを考えると、トラブルはできる限り回避したいものです。そのために、遺族全員で遺品整理を行い、合意の上で遺品整理を行いましょう。

また、あまりに実家に物が多い場合は、生前から着手していくことも大切です。親と相談した上で仕分けや断捨離を行いましょう。遺品整理が精神的ショックからなかなか進まない、相続人が多くて話し合いが進まないといった場合は専門家への相談も視野に入れることをおすすめします。

親の死で遺族が揉めることのないよう、遺品整理には最大限の配慮と注意が必要です。

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