独居老人が急増中・・・高齢化社会を迎えた日本の将来と対策は?

現代の日本は、世界でもトップレベルの高齢化社会です。
厚生労働省が発表した平成28年の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳。これは過去最高の数字で、世界では香港に次いで2位という結果でした。

長寿はおめでたいことです。
でも、高齢者が増えるにつれ、孤独死や独居老人といった問題も増えています。

また、日本では、少子化の問題も叫ばれて久しいですね。
総務省の統計によれば、第二次世界大戦終戦時に7199万人だった日本の人口は爆発的に増え、終戦55年後の2000年には1億2,693万人を記録。
2004年に1億2,784万人まで増えましたが、これをピークに減少しています。
総務省は、この人口減少化を「千年単位でみても類をみない、極めて急激な減少」としています。

高齢化率も、2004年時点で19.6%だったのに対し、2050年には人口が9,515万人、高齢化率は39.6%と予想。日本は高齢者ばかりの国になっていくわけです。
今後の日本がどうなっていくのでしょうか?

独居老人とは?

  • 独居老人はどのくらいいるの?
  • 高齢者が一人暮らしをするのはなぜ?

独居老人はどのくらいいるの?

総務省統計局の国勢調査資料によれば、一人暮らしをしている「単独世帯」は平成27年で1,841万8000世帯。
そのうち65歳以上の単独世帯は592万8000世帯となっています。平成22年と比べると、
単独世帯は9.7%増、さらに65歳以上の単独世帯は23.7%と増えています。一般世帯のうち、単独世帯の占める割合も、32.4%から34.6%に上昇しています。

独居老人は今後も増加すると見込まれており、2035年には高齢者のうち男性の16.3パーセント、女性の23.4パーセントが一人暮らしをすることになると推計されています。

高齢者が一人暮らしをするのはなぜ?

では、高齢者が一人暮らしをする理由を内閣府のデータからみてみましょう。

経済状況

生活をしていくには、当たり前ですがお金が必要ですね。一人暮らしの高齢者の経済状況はどうなっているのでしょうか?

内閣府の「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)」では、高齢者の暮らし向きについてアンケートをしています。

その結果「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人が49.6%と、約5割を占めています。
さらに「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と答えた人15.0%を合わせると、日々の生活を心配なく暮らしている人の割合は64.6%となります。

そのうちで、単身世帯は男性で50.6%、女性では58.7%を占めており、高齢者の多くは経済的な点で現在の暮らしに満足していることがわかります。
単身世帯では男女ともに貯蓄のない人の割合が高いようですが、贅沢をしなければ生活を維持していけるという状況が見えてきます。

住居の環境

内閣府の「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)」によると、単身世帯の男性で58.2%、女性で75.1%が一戸建てやマンションなど持ち家で生活しています。
賃貸に住んでいる人の割合が意外と低いですね。
また、厚生労働省の政策レポートによると、同居や隣居を志向する高齢者は減ってきています。
その結果、今後、高齢者の単身世帯や高齢者夫婦のみの世帯が増加すると予測されています。

幸福度・満足度

高齢者は、果たして毎日をどのように感じて生きているのでしょうか?
内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)」をみてみましょう。

このデータでは、65歳以上の人々に対し、「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、現在の「幸福度」を尋ねています。
最も高いのは、真ん中あたりの5点で28.3%。平均点は6.59点という結果に。
年齢別では75歳以上で6.79点、さらに80歳以上では平均点が6.97と最も高くなっています。

また「自分の生活に満足しているか」という質問では「はい」と答えた人がなんと全体の78.7%という高い割合を示しています。

つまり、高齢者の多くは心配なく毎日の生活を送り、幸せを感じているという状況が見えてきました。
単身世帯の高齢者が、このまま一人で気楽に生きていければいいと思うのも、うなづける結果ではないでしょうか。

独居老人増加による問題は?

現在は、まあまあ幸せであるという結果が出ている高齢者の一人暮らしですが、その反面、様々な問題も起こっています。

  • 認知症の問題
  • 高齢者の孤立
  • 高齢者の孤独死

認知症の問題

高齢になるとともに心配になるのが認知症ですね。
厚生労働省老健局の「都市部の高齢化対策の現状(平成25年)」によると、要介護認定データによる認知症高齢者数は、平成22年9月末で280万人。このうちの半数、140万人が一人暮らしをしています。

一人暮らしの高齢者が認知症にかかると、近隣でトラブルを起こしてしまうことがあります。
症状が悪化するにつれ、大声で騒いだり、徘徊したり、ごみ出しのルールを守れなくなったりして近所から苦情が発生するのです。

住居が賃貸の場合、部屋からの退居を余儀なくされたり、また、本人にはわからないまま犯罪に発展したりすることもあるので、認知症にかかった高齢者の一人暮らしはリスクが高いと言えます。

高齢者の孤立

少子化や未婚率の上昇など様々な事情から家族と世帯を共にしない高齢者が増えているなか、多くの高齢者が直面しているのが、社会からの孤立と孤独死の問題です。

50歳時の未婚割合を「生涯未婚率」といいます。
平成27年の国勢調査によると、生涯未婚率は前回(平成22年)の調査に比べて急上昇。男性では23.37%、女性で14.06%と、過去最高の割合となりました。

1990年には男性5.57%、女性4.33%だった生涯未婚率が、25年ほどで4倍前後にも増えているのです。
結婚する人が少なくなれば、子供の数も少なくなります。
もちろん少子化の原因は未婚率だけにあるわけではありませんが、大きな理由の一つと考えられるでしょう。

では、一人暮らしの高齢者は、いざという時に頼れる人はいるのでしょうか。
内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)」では、一人暮らしの高齢者に対して、いくつかの事例を挙げ「このような時に頼りたい相手はいますか」という質問をしています。

たとえば、「日常のちょっとしたことを頼みたい相手」は「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」の合計が47.1%。

また「心配事や悩み事を相談したい相手」という質問では、「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」割合は31.4%と、周囲に頼らない、頼れない高齢者が多いことを示しています。

高齢者の日常における人との関わりを見ると、60歳以上の高齢者の会話の頻度は、全体では9割が毎日会話をしていますが、一人暮らし世帯では「2~3日に1回」以下の人が多くなっています。
男性の単身世帯で28.8%、女性の単身世帯で22.0%と、3割近い人が、人とあまり交流せずに生活していることになります。

では、ご近所付き合いはどうでしょうか?
近所づきあいの程度は、全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は5.1%となっています。
ただ、一人暮らしの高齢者に関しては、女性は「親しくつきあっている」が60.9%と高い割合を占めていますが、男性に関しては「つきあいがほとんどない」が17.4%と、ご近所での交流がない人が2割近くに上ります。

ご近所づきあいが少しでもあれば、何かあった時に早く気づいてもらえる確率が高くなるので、つきあいがない高齢者が多いのは心配な状況ですね。
このような資料から、地域との接点が少なく、社会から孤立する一人暮らしの高齢者の姿が浮き彫りになってきます。

高齢者の孤独死

高齢者の多くが直面しているのが、孤独死の問題です。
東京都23区内で発生したすべての不自然死について、死体の検案及び解剖を行っている東京都監察医務院の資料を見てみましょう。

この資料によると、東京23区内における65歳以上の一人暮らしの人の孤立死者数は、平成15年には1,451人だったのに対し、平成27年には3,127人と倍増しています。

また、独立行政法人都市再生機構が運営・管理する賃貸住宅約74万戸において、単身の居住者で死亡から長時間(1週間を超えて)経過してから発見された件数は、平成27年に179件、65歳以上に限ると136件となっています。

こういったことから考えると、一人暮らしの高齢者は地域との接点や他人との交流が少なく、異常が起こっても気づいてもらえず、長期間放置されるような状況が起こりやすいと言えるのではないでしょうか。

「2025年問題」を目の前にして……

高齢化のキーワードの一つとして「2025年問題」があります。
1947年~1949年の第1次ベビーブームに生まれた約800万人の人々「団塊の世代」が、2025年で75歳以上の「後期高齢者」となるのです。

  • 介護の問題
  • 「老老介護」の問題
  • 社会保障費の問題
  • 問題解決には?

介護の問題

2025年時点での後期高齢者は約2,179万人、65歳以上の前期高齢者を含めると約3,658万人に達すると推定されています。
その結果、2020年代には高齢化率は30%を上回ります。すると、少子化が進む現状では、介護の担い手が不足していきます。

現在でもすでに「介護離職」、「介護難民」、「特別養護老人ホームの待機者問題」などの問題が叫ばれていますが、2025年以降さらに加速していきます。
今後、高齢者をどう支えていくか、社会全体で考えていかなくてはなりません。

「老老介護」の問題

高齢化が進む中「老老介護」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。
「老老介護」とは、お年寄りがお年寄りを介護する状況のことです。

介護といえば、子供やその配偶者が親の世話をするというイメージがありますが、少子化や未婚率の増大によって状況は激変しています。

年老いた子供が、さらに年老いた親の介護をしたり、子供がおらず、配偶者の介護をするといったケースが増えていきます。
介護疲れから自殺や心中を企てるといった事件も少なくありません。

2025年には、世帯主が65歳以上である高齢者世帯が約1,840万世帯に増加し、そのうちの7割を一人暮らしのお年寄りや、高齢の夫婦のみの世帯が占めると予測されています。

社会保障費の問題

「社会保障費」とは、年金、医療、介護などにかかる費用のことです。この費用が危機的な状況になっていきます。

厚生労働省が発表した「介護給付と保険料の推移」によれば、65歳以上の人の保険料は、制度開始当初は全国平均で月額2,911円でした。
しかし、現在は4,972円に上がっています。
保険料は市町村が決めるので地域によって異なりますが、なかには5,000円を超えている地域もあるのです。

そこへきて、社会保障料を払う側にいた団塊の世代が、2025年には給付を受ける側に回るのです。その結果、社会保障財政のバランスが崩れることは十分考えられます。

いずれ、利用者の負担を増やすか、増税するか、または両方を行わなくてはならなくなります。今後、現役世代の負担がますます重くなっていくことは避けられないでしょう。

また、将来的に、現在の年金システムが崩壊している可能性もあることも大きな問題です。

問題解決には?

政府は介護離職ゼロ、「日本一億総活躍社会」を打ち出していますが、少子高齢化の歯止めがかからない現在、実現はかなり難しいでしょう。
そんな中、「2025年問題」に立ち向かう方法は「介護予防」を行うことです。

介護が必要になる理由に多いのは、脳卒中、そして認知症です。つまり、この2つの病気を予防することが大切なことなのです。

また、自立した生活を送ることができる期間「健康寿命」を延ばすことも重要です。
健康寿命を延ばすには、まず生活習慣を見直すこと。そして、適切な運動や健康的な食事をすることによって病気を予防するわけです。

近年、地域や自治体でも、高齢者のための集まりや健康教室などを開いています。積極的に利用して、健康的な生活を送りましょう。

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