お墓の整理はどうすればいいの?

お超高齢化社会が進む日本にあって、大切な家族が亡くなること、その遺品を整理しなければならない時は、突然やって来ます。

特に親御さんが高齢になれば、心の準備はもちろん、遺品整理の準備も考えておかなければなりません。
親御さんがご存命のうちに、「生前整理」に注目が集まっているのも、そんな日本の現状を象徴していると言えるでしょう。
生前整理の代表例といえば、まず実家の片付けを始めたり、相続に関する品々の権利書などを整理したり、あるいはエンディングノートを作成したりといったことが挙がることかと思います。
その生前整理のなかに、お墓に関する問題が含まれていることはご存じでしょうか。
生きている間に自分のお墓や墓地を見つけておくことはもちろん、現在話題となっているのは、その真逆、現在あるお墓や墓地を整理する「墓じまい」なのです。
今回は遺品整理における、お墓の問題について触れたいと思います。
お墓については宗教によって形式が異なりますが、今回は仏教におけるケースを説明することにします。

生前整理でお墓・納骨堂の準備をしておく

現在、親が子に金銭的負担をかけないよう、生前に自身のお墓を用意しておくケースが増えています。
まず墓石の価格相場は、墓石の種類にもよりますが、一般的に安いものであれば60万円、高額なものでは300万円ほどと言われています。
これは墓石のみの値段で、文字を彫ったり石を磨いたりといった作業の費用も必要となります。
さらにお墓には墓地代(永代使用料)、お墓の管理費などもかかります。
永代使用料は約1.2平米で、東京都23区であれば平均160万円から200万円、それ以外でも30万円から60万円という価格が相場のようです。
もちろんこの価格は墓地(霊園)が場所・管理団体によって大きく変動します。
加えて、お墓の管理費用も年間で4000円から数万円がかかります。「お墓の管理」とは、管理団体や寺院が墓石や墓地を常に綺麗にしておいてくれたりするという、お墓を維持していくためには必要なものです。
こうしたお墓に関する費用の総額は何百万単位になることもあり、家族・親族にとってもすぐ用意できる金額ではありません。
そこで親としては、そんな金銭的負担を子にかけないよう、生前に自分が墓石や墓地を購入し、また管理費などの支払いも手続きを済ませておくケースが増えているのです。

最近は、墓石や墓地を購入せず「納骨堂」に遺骨を納めるケースも増えています。
納骨堂とは室内で骨壺に入った遺骨を保管・管理しておく施設のことです。
利用するのは宗教の別も問わず、また墓地や墓石を購入するよりも費用が安くなることもあり、現在では寺院が墓地とともに管理するのではなく、納骨堂のみの施設もあるほど需要が高まっています。
形式は多種多様ですが、最も多いのはロッカー式のものです。
お参りの際にはロッカー式の扉を開き、お線香やお供え物などを入れることができるので便利です。
ただし施設によっては管理期限があり、その場合は期限終了とともに契約を更新する必要があります。
契約更新を怠ってしまうと、大事な遺骨が「無縁仏」となってしまうこともありますので、注意してください。

埋葬・納骨に期限はないが制約はある

遺骨をいつまでに埋葬・納骨しなければならない、という期限はありません。
一周忌を迎えるまでに、とよく言われますが、それもひとつの目安です。
「墓地埋葬等に関する法律」(通称、墓埋法)では、「埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。」とあるのみ(もちろん例外もあります)。つまり法律上、埋葬について「いつから」は定められていても、「いつまでに」という期限は決められていないのです。
火葬後の遺骨は七七日(亡くなってから四十九日)まで自宅に安置し、四十九日法要の際にお墓へ埋葬したり、納骨堂に納めることが多いようです。
ただし、埋葬・納骨に「いつまでに」という期限はありませんが、「どこに」という制約はあります。
「墓地埋葬等に関する法律」(通称、墓埋法)によって、遺骨は各都道府県が指定した墓地に埋葬しなければならないことが定められているのです。
さすがに都道府県の認可を受けていない業者が大っぴらに宣伝し、埋葬や納骨を受け付けるケースは見られませんが、それもしっかりと法律で定められているからとも言えます。

生前整理においても、親御さんにお墓のことを確認しておくこと、あるいは家族・親族のなかでも墓石・墓地・お墓の管理について話し合っておくことは、重要なポイントです。
金額も大きいため、専門家に問い合わせてみるのも良いでしょう。
現在はインターネットで霊園や墓地・墓石を探すことができるサイトもありますし、また霊園や寺院だけでなく、葬儀会社も葬儀だけでなくお墓に関する相談を受け付けています。
特に金額などは直接、業者と会い、相談することをお勧めします。

注目を集めている「墓じまい」とは

ここまで遺品整理にも関係してくる、お墓の問題について触れてきました。
生前、あるいは亡くなった後に墓石・墓地や納骨堂の手配をすることも重要ですが、現在はその逆とも言える作業に注目が集まっています。
それは「墓じまい」です。
文字どおり、お墓を撤去、墓地を返還したりすることを言います。

ではなぜ現代で「墓じまい」を行うことが増えたのでしょうか。
やはり核家族化や高齢化社会が大きな影響を及ぼしており、大きな理由としては次の2点が挙げられます。

1. 子供に金銭的・労働的負担をかけたくない
先に述べたとおり、お墓に関する費用は、場合によっては非常に高額なものとなります。
新規に墓石や墓地を購入するケースではなく、ご先祖様より受け継いだお墓に自分が入り、子たちがそれを守っていくだけでも、当然のことながら維持費が発生します。
霊園・寺院に管理費を支払い、通常のケアを行ってもらうことはできますが、やはりお墓を維持するためには、修繕・清掃も含めて新規の費用はどうしても必要になってくるものです。
子からすれば、先祖代々のお墓を守っていくことに対する、金銭的・労働的な負担は問題ないかもしれませんが、自分の死後に子へ負担をかけたくないと思うのも当然かもしれません。

2. 子孫が絶え、無縁仏になってしまう
現代ニッポンは核家族化、高齢化社会が進み、さらには少子化も大きな問題となっています。
すでに子が親元から旅立ち、遠く離れた場所で生活を営み、そこで新たな世帯を形成することも一般的になりました。
そこでひとつの問題が発生します。実家で守られてきた、先祖代々のお墓をどう維持していくかということです。
子にとっても、日頃からお参りしたり、お墓の掃除を行いたいという希望があっても、現在の生活拠点が離れた場所にあれば、それもなかなか叶いません。
さらに少子化によって、お墓を受け継ぐ子孫がいなくなった場合(子が女性ばかりで、全員が嫁いでしまった場合も含む)、どうなるでしょうか。
結果、お墓をお参りしてくれる人がいなくなり、そのまま無縁仏となってしまうことが、少なくないのです。
自身が入っているお墓、あるいはご先祖様が眠っているお墓が無縁仏となり、放置されてしまうのは、誰にとっても悲しいものです。
ならば生前にお墓を整理しておく――「墓じまい」という選択をするのも、当然なのかもしれません。

「墓じまい」の基本的な流れ

実際に「墓じまい」――お墓を整理するには、どうすればよいのでしょうか。
ここで一般的な「墓じまい」の流れを説明しましょう。

1) 遺骨の行き先を決める
「墓じまい」とは文字どおり、お墓を整理することであり、墓地から墓石を撤去することになります。
そこでお墓に眠っている遺骨を、お墓の撤去後はどこで管理するか決めておかなくてはいけません。
遺骨の行き先としては、次のようなものが挙げられます。

・永代供養墓(合祀)
寺院や霊園が運営する共同墓地や納骨堂を、永代供養墓と言います。ここに他の人と一緒に入る(合祀)は、近年増えているパターンです。
これは墓じまいに限らず、先にご紹介したように、墓石や墓地の購入や維持の負担を子に背負わせたくない親御さんが、生前に合祀を選択することも多くなっています。
永代供養墓の場合は、恒久的に管理者(寺院・霊園など)が手入れや供養を行ってくれるため、お墓の掃除など遺族の金銭的・労働的な負担が軽減されます。
また、永代供養墓は宗教の別を問いません。したがって子の家の近くの寺院や霊園、納骨堂に合祀してもらうと、子にとってもお参りしやすいというメリットもあります。

・散骨
故人の遺体を火葬したあと、遺骨を粉末状にし、海や山に撒く葬送方法を「散骨」と言います。
まず火葬した遺骨をそのままの形で撒いてしまうと、刑法で罰せられてしまう(遺棄罪)点には注意が必要です。
散骨のためには、遺骨を2ミリ以下の粉末状にしなければいけません。さらに、散骨の場所についても、どこに撒いてもよいというわけにもいかず、海でも山でも撒く場所にとっては、その周辺に住んでいる人や、仕事をしている人とトラブルが発生することもあります。
散骨を選択する場合でも、自身で行うのではなく、専門業者に任せたほうがトラブルを避けることができるでしょう。

・手元供養(自宅供養)
自宅で遺骨を管理することを「手元供養(自宅供養)」と言います。
この方法だと永代供養墓や散骨よりも比較的費用を抑えられ、また常に故人と一緒にいることができるという、心理的なメリットもあります。

2) 権利関係の確認、寺院・霊園との交渉
お墓(遺骨)の管理には、相続問題も関わってきます。また法事を行ううえでも、祭祀継承権など家族・親戚と話し合っておくことも必要となります。
この権利関係を整理したうえで、現在お墓を管理している寺院や霊園に、墓じまい(お墓の撤去)する旨を伝えます。
さらに遺骨の行き先が永代供養墓である場合は、市区町村へ行き「改葬許可申請」の手続きを行います。これは遺骨を今のお墓から別のお墓へ移すために必要な申請で、散骨や手元供養の場合は手続きの必要はありません。

3) 墓石の撤去、墓地の返納
墓石の撤去は墓石屋さんにお願いすることになります。撤去後、更地にした墓地は、管理していた寺院や霊園に永代使用権を返納して、「墓じまい」は完了です。

上記のとおり、お墓や埋葬、墓じまいには様々な手続きが必要となり、そのため多くの業者が関わってきます。
特に最近、墓じまいは多くの代行業者が存在していますが、依頼者と業者の間でトラブルが起こることも少なくありません。
なかには、ありもしない寺院や霊園、専門業者とのトラブルを煽り、「ウチに任せれば大丈夫」と高額の料金を請求する代行業者もいるほどです。
一方で、専門知識が必要な部分もあり、個人で行うより業者に任せたほうがよいことも多いのも事実です。

ご家族が亡くなった直後に、こうしたお墓の問題に対処するのは、遺族にとっても難しいことでしょう。
もしもの場合に慌てないよう、お墓についても事前の準備や業者選びなど、生前整理が重要となってくることは言うまでもありません。
故人と遺族、どちらにとっても大切な生前整理に、しっかり取り組んでおきましょう。

独居老人が急増中・・・高齢化社会を迎えた日本の将来と対策は?

現代の日本は、世界でもトップレベルの高齢化社会です。
厚生労働省が発表した平成28年の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳。これは過去最高の数字で、世界では香港に次いで2位という結果でした。

長寿はおめでたいことです。
でも、高齢者が増えるにつれ、孤独死や独居老人といった問題も増えています。

また、日本では、少子化の問題も叫ばれて久しいですね。
総務省の統計によれば、第二次世界大戦終戦時に7199万人だった日本の人口は爆発的に増え、終戦55年後の2000年には1億2,693万人を記録。
2004年に1億2,784万人まで増えましたが、これをピークに減少しています。
総務省は、この人口減少化を「千年単位でみても類をみない、極めて急激な減少」としています。

高齢化率も、2004年時点で19.6%だったのに対し、2050年には人口が9,515万人、高齢化率は39.6%と予想。日本は高齢者ばかりの国になっていくわけです。
今後の日本がどうなっていくのでしょうか?

独居老人とは?

  • 独居老人はどのくらいいるの?
  • 高齢者が一人暮らしをするのはなぜ?

独居老人はどのくらいいるの?

総務省統計局の国勢調査資料によれば、一人暮らしをしている「単独世帯」は平成27年で1,841万8000世帯。
そのうち65歳以上の単独世帯は592万8000世帯となっています。平成22年と比べると、
単独世帯は9.7%増、さらに65歳以上の単独世帯は23.7%と増えています。一般世帯のうち、単独世帯の占める割合も、32.4%から34.6%に上昇しています。

独居老人は今後も増加すると見込まれており、2035年には高齢者のうち男性の16.3パーセント、女性の23.4パーセントが一人暮らしをすることになると推計されています。

高齢者が一人暮らしをするのはなぜ?

では、高齢者が一人暮らしをする理由を内閣府のデータからみてみましょう。

経済状況

生活をしていくには、当たり前ですがお金が必要ですね。一人暮らしの高齢者の経済状況はどうなっているのでしょうか?

内閣府の「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)」では、高齢者の暮らし向きについてアンケートをしています。

その結果「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人が49.6%と、約5割を占めています。
さらに「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と答えた人15.0%を合わせると、日々の生活を心配なく暮らしている人の割合は64.6%となります。

そのうちで、単身世帯は男性で50.6%、女性では58.7%を占めており、高齢者の多くは経済的な点で現在の暮らしに満足していることがわかります。
単身世帯では男女ともに貯蓄のない人の割合が高いようですが、贅沢をしなければ生活を維持していけるという状況が見えてきます。

住居の環境

内閣府の「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)」によると、単身世帯の男性で58.2%、女性で75.1%が一戸建てやマンションなど持ち家で生活しています。
賃貸に住んでいる人の割合が意外と低いですね。
また、厚生労働省の政策レポートによると、同居や隣居を志向する高齢者は減ってきています。
その結果、今後、高齢者の単身世帯や高齢者夫婦のみの世帯が増加すると予測されています。

幸福度・満足度

高齢者は、果たして毎日をどのように感じて生きているのでしょうか?
内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)」をみてみましょう。

このデータでは、65歳以上の人々に対し、「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、現在の「幸福度」を尋ねています。
最も高いのは、真ん中あたりの5点で28.3%。平均点は6.59点という結果に。
年齢別では75歳以上で6.79点、さらに80歳以上では平均点が6.97と最も高くなっています。

また「自分の生活に満足しているか」という質問では「はい」と答えた人がなんと全体の78.7%という高い割合を示しています。

つまり、高齢者の多くは心配なく毎日の生活を送り、幸せを感じているという状況が見えてきました。
単身世帯の高齢者が、このまま一人で気楽に生きていければいいと思うのも、うなづける結果ではないでしょうか。

独居老人増加による問題は?

現在は、まあまあ幸せであるという結果が出ている高齢者の一人暮らしですが、その反面、様々な問題も起こっています。

  • 認知症の問題
  • 高齢者の孤立
  • 高齢者の孤独死

認知症の問題

高齢になるとともに心配になるのが認知症ですね。
厚生労働省老健局の「都市部の高齢化対策の現状(平成25年)」によると、要介護認定データによる認知症高齢者数は、平成22年9月末で280万人。このうちの半数、140万人が一人暮らしをしています。

一人暮らしの高齢者が認知症にかかると、近隣でトラブルを起こしてしまうことがあります。
症状が悪化するにつれ、大声で騒いだり、徘徊したり、ごみ出しのルールを守れなくなったりして近所から苦情が発生するのです。

住居が賃貸の場合、部屋からの退居を余儀なくされたり、また、本人にはわからないまま犯罪に発展したりすることもあるので、認知症にかかった高齢者の一人暮らしはリスクが高いと言えます。

高齢者の孤立

少子化や未婚率の上昇など様々な事情から家族と世帯を共にしない高齢者が増えているなか、多くの高齢者が直面しているのが、社会からの孤立と孤独死の問題です。

50歳時の未婚割合を「生涯未婚率」といいます。
平成27年の国勢調査によると、生涯未婚率は前回(平成22年)の調査に比べて急上昇。男性では23.37%、女性で14.06%と、過去最高の割合となりました。

1990年には男性5.57%、女性4.33%だった生涯未婚率が、25年ほどで4倍前後にも増えているのです。
結婚する人が少なくなれば、子供の数も少なくなります。
もちろん少子化の原因は未婚率だけにあるわけではありませんが、大きな理由の一つと考えられるでしょう。

では、一人暮らしの高齢者は、いざという時に頼れる人はいるのでしょうか。
内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)」では、一人暮らしの高齢者に対して、いくつかの事例を挙げ「このような時に頼りたい相手はいますか」という質問をしています。

たとえば、「日常のちょっとしたことを頼みたい相手」は「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」の合計が47.1%。

また「心配事や悩み事を相談したい相手」という質問では、「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」割合は31.4%と、周囲に頼らない、頼れない高齢者が多いことを示しています。

高齢者の日常における人との関わりを見ると、60歳以上の高齢者の会話の頻度は、全体では9割が毎日会話をしていますが、一人暮らし世帯では「2~3日に1回」以下の人が多くなっています。
男性の単身世帯で28.8%、女性の単身世帯で22.0%と、3割近い人が、人とあまり交流せずに生活していることになります。

では、ご近所付き合いはどうでしょうか?
近所づきあいの程度は、全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は5.1%となっています。
ただ、一人暮らしの高齢者に関しては、女性は「親しくつきあっている」が60.9%と高い割合を占めていますが、男性に関しては「つきあいがほとんどない」が17.4%と、ご近所での交流がない人が2割近くに上ります。

ご近所づきあいが少しでもあれば、何かあった時に早く気づいてもらえる確率が高くなるので、つきあいがない高齢者が多いのは心配な状況ですね。
このような資料から、地域との接点が少なく、社会から孤立する一人暮らしの高齢者の姿が浮き彫りになってきます。

高齢者の孤独死

高齢者の多くが直面しているのが、孤独死の問題です。
東京都23区内で発生したすべての不自然死について、死体の検案及び解剖を行っている東京都監察医務院の資料を見てみましょう。

この資料によると、東京23区内における65歳以上の一人暮らしの人の孤立死者数は、平成15年には1,451人だったのに対し、平成27年には3,127人と倍増しています。

また、独立行政法人都市再生機構が運営・管理する賃貸住宅約74万戸において、単身の居住者で死亡から長時間(1週間を超えて)経過してから発見された件数は、平成27年に179件、65歳以上に限ると136件となっています。

こういったことから考えると、一人暮らしの高齢者は地域との接点や他人との交流が少なく、異常が起こっても気づいてもらえず、長期間放置されるような状況が起こりやすいと言えるのではないでしょうか。

「2025年問題」を目の前にして……

高齢化のキーワードの一つとして「2025年問題」があります。
1947年~1949年の第1次ベビーブームに生まれた約800万人の人々「団塊の世代」が、2025年で75歳以上の「後期高齢者」となるのです。

  • 介護の問題
  • 「老老介護」の問題
  • 社会保障費の問題
  • 問題解決には?

介護の問題

2025年時点での後期高齢者は約2,179万人、65歳以上の前期高齢者を含めると約3,658万人に達すると推定されています。
その結果、2020年代には高齢化率は30%を上回ります。すると、少子化が進む現状では、介護の担い手が不足していきます。

現在でもすでに「介護離職」、「介護難民」、「特別養護老人ホームの待機者問題」などの問題が叫ばれていますが、2025年以降さらに加速していきます。
今後、高齢者をどう支えていくか、社会全体で考えていかなくてはなりません。

「老老介護」の問題

高齢化が進む中「老老介護」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。
「老老介護」とは、お年寄りがお年寄りを介護する状況のことです。

介護といえば、子供やその配偶者が親の世話をするというイメージがありますが、少子化や未婚率の増大によって状況は激変しています。

年老いた子供が、さらに年老いた親の介護をしたり、子供がおらず、配偶者の介護をするといったケースが増えていきます。
介護疲れから自殺や心中を企てるといった事件も少なくありません。

2025年には、世帯主が65歳以上である高齢者世帯が約1,840万世帯に増加し、そのうちの7割を一人暮らしのお年寄りや、高齢の夫婦のみの世帯が占めると予測されています。

社会保障費の問題

「社会保障費」とは、年金、医療、介護などにかかる費用のことです。この費用が危機的な状況になっていきます。

厚生労働省が発表した「介護給付と保険料の推移」によれば、65歳以上の人の保険料は、制度開始当初は全国平均で月額2,911円でした。
しかし、現在は4,972円に上がっています。
保険料は市町村が決めるので地域によって異なりますが、なかには5,000円を超えている地域もあるのです。

そこへきて、社会保障料を払う側にいた団塊の世代が、2025年には給付を受ける側に回るのです。その結果、社会保障財政のバランスが崩れることは十分考えられます。

いずれ、利用者の負担を増やすか、増税するか、または両方を行わなくてはならなくなります。今後、現役世代の負担がますます重くなっていくことは避けられないでしょう。

また、将来的に、現在の年金システムが崩壊している可能性もあることも大きな問題です。

問題解決には?

政府は介護離職ゼロ、「日本一億総活躍社会」を打ち出していますが、少子高齢化の歯止めがかからない現在、実現はかなり難しいでしょう。
そんな中、「2025年問題」に立ち向かう方法は「介護予防」を行うことです。

介護が必要になる理由に多いのは、脳卒中、そして認知症です。つまり、この2つの病気を予防することが大切なことなのです。

また、自立した生活を送ることができる期間「健康寿命」を延ばすことも重要です。
健康寿命を延ばすには、まず生活習慣を見直すこと。そして、適切な運動や健康的な食事をすることによって病気を予防するわけです。

近年、地域や自治体でも、高齢者のための集まりや健康教室などを開いています。積極的に利用して、健康的な生活を送りましょう。

終活とは? 今後の人生を豊かに送るためにやっておきたい3つのこと

ここ数年で、すっかり定着した「終活」という言葉。
まだ自分には関係ないと思っている人も、なんとなく耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「終活」は2012年の流行語大賞にもノミネートされ、広く知られるようになりました。

「終」という文字を見ると、寂しくなったり、死に対して恐ろしいという気持ちが湧いたり、複雑な気持ちになる人もいるかもしれません。
死を怖がらないのは難しいことですが、少しだけ勇気を出して、自分の死について考えてみませんか?

死と向き合い、より良い人生を過ごすための活動が「終活」です。どんなことを行うのか、まとめました。

終活とは?

「終活」とは、「人生の終わりのための活動」の略語です。

人が人生の最期を迎えるにあたって行う様々な準備や、人生の総括のことをいいます。
どんな人にも必ず「死」は訪れます。
「死」はいつやって来るのかわかりませんが、最後まで自分らしい人生を送りたいもの。終活は、そのための準備です。

終活が広まった背景には、日本の社会状況が大きく関係しています。
特に、少子高齢化や、家族の形の変化が大きな理由です。

現代の日本は、世界でもトップレベルの高齢化社会です。また、これと同時に、少子化の問題も見過ごすことはできません。
総務省の統計によれば、日本の人口は2004年に1億2,784万人まで増えましたが、これをピークに減少し続けています。
高齢化率も、2004年時点で19.6%だったのに対し、2050年には人口が9,515万人、高齢化率は39.6%と予想。今後、日本は高齢者ばかりの国になっていくわけです。

また、昔とは家族の意識も変化しています。核家族が増え、子供と同居しない人が多くなり、一人暮らしの高齢者が増えていることから、孤独死なども問題になっています。

かつては、子どもが親の面倒を見ることが当たり前でした。兄弟も多く、子供1人にかかる負担も多くはありませんでした。
しかし現代では、子供1人にかかる負担が大きくなるため、子供に頼れない、苦労させたくないという親が増えているわけです。

こうした社会背景によって、終活というものが広まったと考えられます。

終活は何のためにするの?

さて、終活は、何のためにするのでしょうか。終活には2つの目的があります。

  • 自分の死後、残された家族の負担を軽減するため
  • 自分の人生を豊かにするため

自分の死後、残された家族の負担を軽減するため

身の回りを整理する

近年、親の家の片付けが子供の負担になっています。もしものことがあったとき、子供に負担をかけないよう身の回りのもの整理しておきましょう。

また、片付けることによって、無駄なもののない清潔な部屋で快適な生活が送れるというメリットもあります。

相続の準備をする

自分の死後、遺族の間で遺産をめぐる争いが起きることがあります。
このような事態は、資産がどのくらいあるか分からないときに起こりがちです。
遺族がお互いを疑って争いに発展してしまうのです。

このような事態を避けるため、資産を明確にしておきましょう。

預金や現金、不動産をはじめとする財産目録を作成し、ローンやクレジットについても明らかにしておきます。
相続について、相続人となる人と十分に話し合っておくことも大切です。

葬儀やお墓の準備をする

身内が急に亡くなった場合、家族が悩むのが葬儀の形やお墓の問題です。

まず、お葬式をどのような規模や形、場所で行いたいか決めておきましょう。最近では、昨年10月、アントニオ猪木さんが生前葬を行って話題になりました。

また、お墓や埋葬方法についても考えておきたいものです。
代々のお墓に入るのか、新しくお墓を建てるのか、また、埋葬でなく海などに散骨するのかなど、現代では、昔は考えられなかったような葬儀や埋葬方法があります。

具体的な希望を残しておけば、人生最後の幕を自分の思い通りに引くことができるだけでなく、もしもの時に家族が悩まずに済みます。
葬儀やお墓は生前予約もできますので、元気なうちから考えておくといいですね。

施設や介護、制度について知っておく

高齢になると、体が不自由になったり、痴呆症にかかったりすることがあります。
そんな時に備え、受けられる制度やサービス、その手続きなどをチェックしておきましょう。

大きな病気になった場合、入院するのか、在宅で医療を受けるのか、延命治療を希望するのかなども重要です。
施設や介護保険制度についても知っておきたいところですね。

また、判断力が衰えてしまった場合、後見人に法律面や生活面で保護・支援してもらう「成年後見制度」があります。
最近では、後見人を信頼できる家族の誰かに指名し、遺産の管理を任せる「家族信託」も注目されています。

自分の人生を豊かにするため

終活で行うことは、物理的なことばかりではなく、精神面を豊かにする活動も含まれています。
これまでの人生をゆっくりと振り返ってみましょう。

残される家族のことを考えたり、友人や知人、今までお世話になった人たちへ思いを致したり、やり残したことや叶わなかった夢などを振り返ってみます。

こうすることで、残された時間のなかで出来ること・出来ないことを把握できるのです。
残りの時間をより豊かに、有効に使えるよう、終活を行いましょう。

身の回りの整理いろいろ

終活のひとつとして、身の回りの整理があります。身の回りの整理のいろいろをみていきます。

  • 生前整理
  • 老前整理
  • 福祉整理

生前整理

行う人=本人
行う年代=60~70代中心だが年代は問わない

生前整理とは、自分が生きているうちに、身の回りのものを整理することです。
自分の死後、家族など残された人たちが、膨大な遺品に囲まれて処分に困ったり、相続などでトラブルを起こすことのないよう、不要なモノを捨てたり、遺産となるものを整理したりします。

生前整理は、もともとは仕事をリタイアし、本格的に先のことを考え始める年代が行うものでした。
しかし近年は、若い世代であっても、親元を離れて一人暮らししている人も多く、さらにミニマリストが流行していることもあり、若い世代にも広がっているようです。

年代によって「死」への現実感は異なっても、周りに迷惑をかけたくない、身軽に生きて生きたいという気持ちは共通しています。

老前整理

行う人=本人
行う年代:40~50代

「老前整理」は、40代、50代のまだまだ働き盛りの世代の人たちが行う身辺整理です。
この年代は、まだまだ身体が思うように動かせます。そのうちに身辺整理をしておこうというものです。

40~50代というと、親の介護が始まったり、親の家を片付けたりといった現実に直面する人が多くなります。
また、子供が独立し、夫婦二人での生活が現実になっていく時期です。
それだけに、自分たちの今後の生き方や暮らし方について、改めて考えるにふさわしい節目なのでしょう。

「老前整理」は、生きているうちに行うのは同じですが、これまでの人生をいったん整理し、身軽になって、その後の人生をよりよくするという意味があります。
40代、50代のうちにある程度の整理をしておけば、恒例になってから「片付けなければ」というストレスが溜まりません。

移動を妨げるモノをなくせば、安全に暮らすことができます。
将来、もしも車いすの生活になっても、モノが少なく、十分な移動スペースが確保されている家ならスムーズに生活できます。

福祉整理

行う人=本人以外の人
行う年代=高齢者(病気にかかった人の場合は全ての年代)

「福祉整理」とは、介護や福祉に関わり、高齢者が健全な生活を続けるために住環境を整えることをいいます。
遺品整理や生前整理のように、いつか来る「死」を意識して行う身辺整理ではありません。

たとえば、介護施設に入居したり、末期がんなどで入院した場合、これまで暮らしていた自宅や部屋を整理するために行います。
外でなく自宅で介護生活を送る人の場合は、介護用ベッドを置くスペースを確保し、介護する人・される人両方が気持ち良く生活できるよう住環境を整えルために行います。

また、認知症にかかった人は、家の中を汚したり、徘徊してごみや不用品を集めてきたりという行動をとるようになることがあります。
このような人が清潔で健康な生活を営めるよう、ごみを捨て、片付けや掃除をします。

さらに、要介護でなくても、自分で片付けや整理が難しい高齢者は増えています。
こういった人が安心して健康な毎日を送れるようにするため、定期的に整理やハウスクリーニングをします。

このように、住環境を整えることで、高齢者や病気の人が健全な生活を送るために行います。

終活、これだけは必ずやっておこう!

終活には様々な内容がありますが、これだけは必ずやっておきたいポイントを挙げておきます。

  • 財産目録の作成
  • 遺言書の作成
  • エンディングノートを活用しよう

財産目録の作成

人が亡くなったあと、一番多いのが遺産相続をめぐる争いです。
これを防ぐには、財産目録を作って遺産がどのくらいあるのかを明確にしておく必要があります。

財産の内容ははっきりしないと、隠し財産があるのではないか、誰か1人だけが生前贈与を受けているのではないかなど、相続人同士の間で疑いの心が生まれる可能性があります。
昨日まで仲の良かった兄弟が今日は口も利かない、などということが現実に起こっているのです。

このほか、相続が完了したあとに借金が見つかったり、家族にわかりにくいインターネット株取引での負債がわかったりした場合、遺族が大打撃を被ることになってしまいます。

そういったトラブルを未然に防ぐため、財産の目録を必ず作っておきましょう。現金や預貯金、不動産、貴金属、骨董品など価値のある財産(プラスの財産)だけでなく、借金やローン、連帯保証人になっていないかどうか(マイナスの財産)など、お金に関する全ての情報を正確に記載します。

財産目録があれば、その内容によって、相続人は遺産を相続するのか、相続を放棄するのか、または一部のみ相続する(限定承認)のかなど、相続の方針を決めることができます。

財産はいったん相続してしまったら、後から借金が発覚しても、基本的にそのマイナス分も相続しなくてはなりません。
こういった場合、かなり面倒な問題に発展します。大切な家族を苦しめないために、財産目録は必ず作りましょう。

遺言書の作成

遺言書では、主に遺産の相続について故人の意思を表します。

  • 財産処分
  • 子どもの認知
  • 相続人の廃除、または廃除の取り消し
  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定、または遺産分割の禁止

このような項目について、遺言書で指定することができます。
遺言書を残すことによって、家族間の争いを避けられる可能性があります。また、自分が財産をあげたいと思う人にあげることもできるのです。

遺産相続については法律で定められていますが、遺言書の内容は法律よりも優先され、故人の遺言を無視した相続を行うことはできません。
これだけの強い効力を持っているだけに、遺言の内容が間違いなく遺言者本人の意思であることが確認できるよう、遺言書は法律に則った方式で作らなくてはなりません。

また、最近では、さまざまな項目が遺言書よりも細かく設定できる「家族信託」が注目されています。
遺言書を作る場合も、家族信託を利用する場合も、専門家に相談するとよいでしょう。

エンディングノートを活用しよう

「終活」ブームとともに知られるようになったのが、「エンディングノート」です。

エンディングノートは、生前整理において最も重要な役割を果たすツールと言えるでしょう。
終活の内容をまとめておくことで、死後に遺族が遺品整理を行いやすくなります。

ただし、エンディングノートに法的効力はありません。
ノートの内容はあくまで“希望”なので、遺言書ほどの重みはないのです。相続問題が発生しそうな資産がある場合は、遺言書のほうが確実でしょう。

その場合、エンディングノートでは、遺言書に記されている内容が、どうしてそうなったかを説明しておくとよいでしょう。
自分の気持ちを生前にまとめておき、自らが話し合いに参加できない場で、補助的に自分の思いを伝えてくれます。

エンディングノートは書店で買えます。また、エンディングノートがダウンロードできる、遺品整理業者・葬儀業者のホームページもあります。
形式は特に決まっていないので、普通のノートでも、パソコンで書いても何でも構いません。遺言書と違い、何度でも書き直すことができます。
日記を書くような感覚で気軽にチャレンジしてみましょう。

遺品整理と宗教物の処分~神道・キリスト教の場合

遺品整理で出る“大物”と言えば、ベッドやタンスなどの大型家具などを思い浮べるかもしれません。
しかし、この他にも“大物”があるのです。それも、処分にかなり困るモノが。

それは、仏壇や神棚です。

まず、処分の仕方がわからない。しかも、その中に神さま、仏さまがいるとされている……。
日本人であれば、それがたとえ自分のものでなくても、処分するものであっても、ぞんざいに扱ってはいけないと感じる人がほとんどではないでしょうか。
最近は仏壇や神棚がないお宅も増えているので、よけいにそう感じる人が多いかもしれません。
何となく怖いな、もしも下手に処分したらバチが当たるのかな? なんて思ってしまいますよね。

大金を払ってご祈祷をしてもらわなくてはいけないのか?
ほかにも供養が必要なのか?
実際に不用品として処分する際は粗大ゴミに出せるのか?

など、わからないことだらけなのではないでしょうか。だからこそ、仏壇や神棚は“困った大物”になってしまうんですね。
今回は、そんな宗教物の処分についてみていきましょう。

仏壇など仏教の宗教物の処分

最近、住宅事情などから仏壇の面倒を見られなくなり、処分する人が増えているようです。
しかし、祖父母や両親が、毎日お水を替えたり、手を合わせたりしてきた仏壇です。仏さまやご先祖さまに失礼にならずに処分するには、どうしたらよいのでしょうか。

  • 閉眼供養
  • 閉眼供養が終わったら
  • 仏具について
  • 供養ができない場合

閉眼供養

仏壇そのものは、粗大ごみとして廃棄することができます。
ただし、その前に必ずしなければならないことがあります。それが「閉眼供養」です。
「精抜き」「魂抜き」ともいわれるもので、僧侶に読経をしてもらい、仏壇に宿っている魂を抜き取る儀式です。この供養を行うことで、仏壇は「ただのモノ」になり、安心して処分できるようになります。

処分の時だけでなく、仏壇を別の場所に移動させたり、修理やリフォームをしたりする場合にも閉眼供養は必要です。ご先祖様の魂に安らかに過ごしていただくため、必ず行いましょう。

閉眼供養は、開眼供養(仏壇に魂を入れる法要)をしてもらったお寺や、葬儀や法事でお世話になったお寺に依頼するのが一般的です。
開眼供養をしているかどうか分からない場合は、菩提寺に確認しましょう。
開眼供養については、ご先祖の魂が宿っていないため閉眼供養をする意味がないとするところと、していなくても仏壇にはご先祖様の魂が宿っているので供養するべきとするところに分かれるようです。こちらも、菩提寺に確認して行なうかどうか決めます。

閉眼供養は、通常、家族のみで行われます。喪服を着る必要はありませんが、「法要」ですので、落ち着いた色合いの地味な服装にしましょう。派手な服装やメイク、Tシャツなどラフすぎる服装は避けます。
閉眼供養の際のお布施(料金)は、お寺や宗派によって違います。こちらも、事前に菩提寺に確認してください。

閉眼供養が終わったら

法要が終われば、仏壇は「ただのモノ」になりますので、粗大ごみの収集に出すことができます。こちらは、地域の自治体にそのまま出せるのかどうか、また、料金などを確認しておきましょう。

購入した仏壇店で引き取ってもらえる場合もあります。新しく買い替えるときには無料で引き取ってもらえますが、処分の場合は有料となることが多いようです。
また、閉眼供養を依頼したお寺で引き取ってもらえる場合もあります。事前に確認しておくとよいでしょう。

仏具について

仏具とは、仏壇の中や前に置く道具全般のことです。僧侶に法要を行なってもらう際や、日々の供養のための道具で、もし破損・汚損したら取り替えることが可能なものを指します。
同じ仏壇内にあっても、仏像や掛け軸、位牌、遺影などは、取り替えが不可能なものは、開眼供養の際に魂が入れられ、ご先祖や故人が宿るので、仏壇と同等の扱いになります。
しかし、仏具は供養の対象ではありませんので、処分の際、特に供養が必要ではなく、そのまま廃棄処分してOKです。

仏具には次のようなものがあります。

  • おりん
  • 木魚
  • ろうそく立て
  • 線香立て
  • 花立て、香炉

など。木製のもの、金属製のもの、樹脂製のもの、陶器など様々ですね。

廃棄するときは、普通のごみと同じように、可燃か不燃、資源ごみなど、自治体のルールに従い分別して出します。
おりん、ろうそく立てなどは、真鍮製が多いので、リサイクルの対象になります。
数珠は、樹脂製のものと石でできたものがありますので、注意が必要です。
線香やろうそくなどの消耗品や、経本などは燃えるごみ扱いになります。
処分する際には、あらかじめ自治体に処分の仕方を確認しておくと安心です。

供養ができない場合

仏壇・仏具を自分で処分できない、したくない
近所に知られたくない
僧侶が見つからない

など、何らかの理由や事情で法要を行なえない場合や処分ができない場合は、遺品整理業者にご相談ください。
遺品整理で仏壇を引き取る際に、供養を代行したり、代行業者をご紹介したりすることができます。

神棚など神道の宗教物の処分

神棚は、もしかしたら仏壇よりも“畏れの念”を感じる人が多いかも知れませんね。子どもの頃、何かいたずらをすると「神さまに怒られるよ」と叱られた人もいるでしょう。
でも実は、宗教物の処分は神道が一番簡単かもしれません。

神道には、仏教でいう経典やキリスト教の聖書のような、共通の教えやルールが存在していません。そのため、宗教物の処分についても「こうでなくてはならない」という決まりがないわけです。
そのなかでも、代表的な処分の仕方を知っておきましょう。

  • お焚き上げをする
  • 神社で祈祷する
  • お札を返す

お焚き上げをする

神棚を、神社で「お焚き上げ」(焼却処分)してもらいます。神社でのお焚き上げは年に数回行われているので、近所の神社に確認してみましょう。

お焚き上げは、神棚の内部にある神具も一緒に行うことができます。ただし、陶器や金属類、ガラスなど燃えない素材は不可という神社もあるので注意が必要です。神棚の扉ガラスなどは、あらかじめ外しておきましょう。

近年、都心では境内でものを燃やせない地域もあります。そのような場合は、遺品整理業者にご相談ください。お焚き上げを代行したり、代行業者をご紹介したりすることが可能です。

神社で祈祷する

不用なった神棚を神社へ持参し、神職の方にご祈祷してもらいます。
社務所や祈祷受付所で、「神棚処分のための祈祷」の申し込みをします。すると、祈祷殿・祈祷所と呼ばれる別棟へ案内され、祈祷に立ち会うことができます。

神棚は祈祷後、神社で廃棄処分してもらえます。
神棚のご祈祷を受け付けているかは、神社によって違います。事前に確認しておきましょう。

お札を返す

神棚の中に入っているお札を取り出します。そして、ほとんどの神社に設置されている「お札返納所」へお札を返納します。
神棚本体は、ごみとして廃棄してOKです。中のお飾り(鏡、お狐さま、神具など)もそのまま捨てて問題ありません。ただし、地域の分別ルールに従って出してください。

神棚の処分に関して、神社によっては「何もせず、そのまま廃棄してOK」というところもあるようです。あまり難しく考えず、あなたが精神的にスッキリする方法を選べばよいのです。
心配であれば、最寄りの神社に確認して処分すると安心ですね。

ロザリオなどキリスト教の宗教物の処分

キリスト教には、ロザリオや不思議のメダイ、聖画像や聖書、また家庭用祭壇などの宗教物があり、「信心用具」といいます。
これらは、ごみとして処分してOKです。故人のものでなく、古くなったり破損したりしたものの場合でも同じです。

なぜなら、キリスト教においては、信心用具は、礼拝の対象ではなく、あくまでそれらを介して神を礼拝する「道具」に過ぎないからです。

日本では仏教が主流なので、ご先祖さまや故人の霊が宿る仏像や仏壇、位牌そのものが信仰の対象となります。
仏像や仏壇は単なる「モノ」ではありませんし、処分するときには「閉眼供養」が必要となります。

そういった文化・風土の中で生まれ育ったわけですから、たとえクリスチャンであっても、信心用具をごみとして捨てることに抵抗のある人も多いでしょう。

しかし教会には、壊れた信心用具などを集めて「供養する」というような習慣や考え方がありません。
もちろんキリスト教においても、信心用具などを祝福する(※祝別といいます)ことはあります。

しかし、その場合でも、品物に魂を入れているわけではありません。
それらを用いて祈る人や、身につける人に神様の恵みがありますようにと祈っているに過ぎず、用具そのものが聖なるものになるわけではないのです。
ですから、信心用具は、ごみとして捨てても信仰上、何の問題もありません。自治体のルールに従い、分別して廃棄すればOKです。

ただ、やはりこれまで愛用していた道具をポイと捨てることに抵抗のある人もいるかも知れませんね。
その場合は、外から見えないようにしたり、元の形があまり目立たないように分解したりして処分するとよいでしょう。
教会や教会関係の施設を建設する際に、古い信心用具を土台部分に埋めたりすることもあるようです。また、古くなった信心用具を回収してくれる教会もあるようです。
捨てることにどうしても抵抗のある人は、教会の責任者に相談してみましょう。

イスラム教の宗教物の処分

日本ではイスラム教は少数派ですが、古くから神戸、名古屋などにモスク(回教寺院)があり、一定数の信者が存在しています。
イスラム教で最も大切なのは、毎日の礼拝で、1日のうち5回、決まった時間に行います。イスラム教では偶像崇拝を禁じているので、宗教物は礼拝に関するものがほとんどのようです。

コーラン(クルアーン)

イスラム教の経典です。
コーランを30に分けた巻を「ジュズ」といい、コーランを覚えるのに使われています。

タスビーフ

イスラム教における数珠で、タスビ、スブハ、ミスバハなどとも呼ばれます。
イスラム教では、礼拝の際に同じ言葉を何度も繰り返し唱えるので、回数をカウントするために使います。数珠で回数が分かれば、数にとらわれることなく祈りに集中できるからです。

珠が33個のものと99個のものがあり、1人で複数のタスビーフを持つのが一般的です。しかし、タスビーフは単に祈りの回数を数えるカウンターとしての意味しかないようです。

キブラマーク

礼拝はメッカに向かって行うため、メッカの方向を示すものです。
コンパスとセットで売られていうことも。

サッジャーダ

礼拝用のマットです。1人分のスペースを確保する大きさです。
イスラム教の礼拝では額を床につけるため、マットを敷きますが、なくても構いません。

聖石

シーア派が礼拝時に使用します。シーア派では礼拝の際、自然物に額がつくようにするため、こういった石を使います。

アスマ=アル・ウスナ

アラーの良い名前のリストです。イスラムには、全部で99の神の名前があります。コーランにも書かれているので、通常はコーランの中で見ることができます。
これを覚えることは義務ではありませんが、暗唱できれば善行であると考えられています。

アヤット・クルシ・カリグラフィ

アヤット・クルシは、コーランの2章・255節が記されています。礼拝後に、アヤット・クルシを唱えると、悪い霊から家族や生活を護れると考えられています。
必ず飾らなくてはならないものではなく、装飾として使ったり、魔除けのお札として飾る家庭があるようです。

イスラム教において、これらの宗教物は単なる道具であり、そこに神が宿るといった性格のものではありません。
あるモスクによれば、不用となった宗教物は、誰か欲しい人、それを使いたい人にあげてよいそうです(たとえ壊れていても)。
どうしても欲しい人、もらってくれる人がいなければ、自治体のルールに従い、ごみとして出して問題ありません。
しかし、それでもやはり日本人は、宗教物を普通に捨てることに抵抗がある人もいますよね。捨てることにためらいがある人は、もう使わないものとしてよけ、しまっておくそうです。

宗教物の処分で一番大切なのは・・・

家族であっても、同じ宗教を信仰しているとは限りません。ましてや、離れて暮らしていた場合はなおさらです。
宗教に関するものはデリケートなので、扱いに悩んでしまいますよね。

そんなとき、一番確実なのは、やはり、その宗教を司るお寺や神社、教会や寺院などに問い合わせることです。
故人が、たとえ知らない宗教や、自分とは違う宗教を信仰していたとしても、何かを信じる心や敬虔な気持ちは同じはず。故人の心を大切にして、適切に処分したいものですね。

故人が残した趣味。大きな楽器等はどう処分していますか?

遺品整理で出るものの中で、大型家具や布団など、サイズが大きなものは処分に困る代表格です。

そのなかでも、かなり困るのがピアノやエレクトーンなどの楽器ではないでしょうか?
特にエレクトーンや電子ピアノなどは、型が古いと処分するしかありません。

そこで、ピアノなど鍵盤楽器の処分についてみていきます。

ピアノの処分

ピアノ(電気を使わない、いわゆるアコースティックピアノ)には、グランドピアノとアップライトピアノがあります。

本来、「ピアノ」とはグランドピアノのことを指します。
弦が横に伸び、大型で、重量は250~400kgにもなります。

一方、アップライトピアノは、フレームや弦、響版が上下に伸びるように作られています。
コンパクトなので、グランドピアノに比べて場所を取りません。重量は200~250kgほどです。

ピアノは、グランド、アップライトにかかわらず、ほとんどの自治体で引き取ってもらえません。
そこで、粗大ごみとして出す以外の処分方法をご紹介します。

  • 不用品回収業者に依頼する
  • 無料引取業者に依頼する
  • 宅配業者のピアノサービスを利用する
  • ピアノ専門の買取業者に依頼する

不用品回収業者に依頼する

インターネットなどで、ピアノを引き取ってくれる回収業者を探しましょう。
業者によって処分費用は違いますが、グランドピアノで4万円~5万円くらい、アップライトピアノで2万円~3万円ほどが相場のようです。

不用品回収業者に依頼した場合、自宅までピアノを回収しに来てくれるので、自分でピアノを運び出す必要はありません。
自治体で適切な業者を紹介してくれることもありますので、尋ねてみてもよいでしょう。

無料引取業者に依頼する

グランドピアノやアップライトピアノを無料で回収してくれる業者があります。
引き取ったピアノを修復し、インドネシアやフィリピンなど新しいピアノの購入が難しい途上国や、福祉施設などへリサイクルピアノとして届けるケースもあります。

運搬やトラックの費用、処分費用がかからず、しかも整備されてピアノを必要としている人々の役に立つことになります。

宅配業者のピアノサービスを利用する

「ヤマトホームコンビニエンス」では、使わなくなったピアノの買い取りや処分をしてもらえます。

ピアノは購入後35年くらいまでのものが目安で、買い取りできるか処分となるかは、品物の状態により違ってきます。
電話かインターネットで、引き取ってもらえるか問い合わせてみましょう。

ピアノ専門の買取業者に依頼する

ピアノを専門に買い取ってくれる業者に依頼する方法もあります。

ヤマハピアノサービス

日本最大のピアノメーカー・ヤマハが運営するピアノ買い取りサービスです。
もし処分したいピアノがヤマハ製であれば、問い合わせてみましょう。
ここでも、引き取ったピアノを整備し、ピアノを必要とする次の人へと渡しています。

河合楽器 ピアノ買取センター

こちらでは、カワイ製以外のピアノも査定・買い取りをしてもらえます。また、電子ピアノの買い取りもしています。
インターネットで査定・相場を確認することもできます。

タケモトピアノ

テレビCMでおなじみの業者です。CMだけではわかりませんが、タケモトピアノでは「世界中の子どもたちに笑顔と音楽、平和」をモットーに、買い取ったピアノを修理し、海外50カ国へ出荷されています。
電話またはインターネットで査定することができます。

電子ピアノの処分

電子ピアノは、音源部に電子回路を用いた楽器です。
意外に耐久力があり、一般的な家電の耐用年数が7年~10年なのに対し、電子ピアノは15~20年も使えるものがあります。

とはいえ、電子ピアノは次々と新機種が発売されるため、あまりに古いものは機能的に時代遅れとなり、壊れていなくても演奏の場では使えないということがあります。
また、製造から7年ほど経つと部品がなくなり、修理できなくなる可能性が高いでしょう。

  • 自治体で処分してもらう
  • 売る

自治体で処分してもらう

電子ピアノは、自治体に粗大ごみとして出すことができます。

自治体で回収してもらう場合は、電話やインターネットで回収の予約をします。
料金を確認し、コンビニなどで料金相当分の「ごみ処理券」を購入しましょう。
処理券はシール式になっているので、出したい電子ピアノに貼り付け、指定の収集場所や玄関の外に出します。
家から運び出してもらうことはできないので、自分で移動させておかなくてはなりません。

指定場所へ自分で持ち込む場合は、インターネットで排出品目や申込者情報など必要な情報を記入し、収集日を確認して申し込みます。
申し込みは電話でもOKです。

申し込みが完了したら、指定日に粗大ごみの受付センターなど指定場所へ運びます。
ただし、キーボード型かアップライト型かなど、大きさによっては自治体で処分できないとこともあるので、事前に問い合わせましょう。

売る

リサイクルショップ

電子ピアノは、一般的に買取金額が低いようです。また、型が古ければ古いほど、買取金額は低くなります。
逆に、ものすごく古くて希少価値の高い名機ならば、高く買い取ってもらえる場合もあります。

オークションで売る

ネットオークションなどでは、リサイクルショップよりは高く売れる場合があるかもしれません。
オークションでも、希少価値のある機種などなら高額落札してもらえることもあります。

しかし、送る段になって、ピアノ専門配送業者に配送を依頼した場合、料金が高額になる場合があります。
出品する前に、配送料について調べておきましょう。

キーボードタイプなら宅配便でも送ることができますが、投げられたり、扱いが雑で壊れたりするケースもゼロではありません。
トラブルにならないよう梱包をしっかりし、「精密機械」と指定しておきましょう。

エレクトーンの処分

大きくて重たいエレクトーン。エレクトーンは大型家電の1つと言えます。
家電リサイクル法のような法律もないので、自治体の粗大ごみに出すことができるでしょうか?

いいえ。エレクトーンは、電子部品やプラスチック部品、さらに木製部品など、様々な素材を組み合わせて作られています。
そのため、解体や分別に手間がかかり、自治体で処分するのは難しいところが多いようです。

また、エレクトーンは電気の通る機械なので、タンスやベッドなどのように、そのまま燃やすこともできないからです。
では、一体どのように処分すればよいのでしょうか?

  • 処分業者に依頼する
  • 買取専門業者に依頼する
  • インターネットのオークションに出す

処分業者に依頼する

まずは、引き取りに来てくれる処分業者に依頼しましょう。
処分業者の場合、壊れていているものでも引き取ってもらえます。
インターネットで検索するか、自治体で処分可能な業者を紹介してもらうとよいでしょう。

処分費用は、おおむね1万5千円~3万円程度の業者が多いようですが、エレクトーンの設置場所によっては、別途費用が発生するケースがあります。

一戸建ての2階に置いてあったり、家がマンションの高層階だったりした場合、運搬が難しくなります。
そのため、足や鍵盤などを外し解体して運んだり、クレーンを使って下ろしたりしなくてはならないため、費用が高額になる可能性があります。

処分を業者に依頼する場合は、必ず事前に見積もりをしてもらいましょう。

買取専門業者に依頼する

まだ演奏ができるエレクトーンなら、買取専門業者に依頼するとよいでしょう。
型が新しく高機能なものほど、高く買い取ってもらえる可能性があります。

買い取りを依頼する場合は、事前にメーカー名、型番、製造年、色を調べておきましょう。
傷や汚れの有無や、わかれば週に何回・何年使用などの状況もチェックしておいてください。
するとスムーズに査定できます。

また、ヘッドホンやイスなどの付属部品や保証書はありますか? これらの付属品が揃っていると、買い取り価格が高くなる可能性があります。
傷が多かったり、劣化がひどかったりするような場合は、買い取ってもらえない場合もあります。

エレクトーンの型番別に、買取価格の相場を公開している業者もあります。
まずはサイトをチェックしてみましょう。

インターネットのオークションに出す

壊れていないエレクトーンなら、ネットオークションに出してみるのもよいでしょう。
型が古くても、そのエレクトーンが欲しい人がいれば、売れるかもしれません。

ネットオークションに出す場合は、メーカー名、型番、製造年、色などのデータをきちんと調べましょう。
また、もしわかれば週にどれぐらい、何年間使っていたかなど使用状況や、傷や汚れがあるかどうかをきちんと確認しておきます。

エレクトーンは大きくて重いので、運搬が難しくなります。
ピアノ配送が可能な業者ならば、エレクトーンにも対応してもらえるので、運搬できる業者と費用をあらかじめ調べ、オークションの落札条件として加えておきましょう。

運搬費用は一般的に1万5千円~2万円くらいです。
2階から下ろしたり設置するためにクレーンを使ったりする場合は、1万円程度プラスされます。
こちらも必ず事前に確認しておきましょう。

鍵盤ハーモニカの処分

小学校の音楽教材としても使用されている鍵盤ハーモニカ。「ピアニカ」という呼び名でおなじみですね。

近年ではプロの演奏に使われることも増えましたが、たいていの人は学校の音楽の時間で使って以来、押し入れの奥にしまったままなのではないでしょうか?
いざとなると、どう処分したらいいのか分からないものの1つですね。

  • ごみとして処分する
  • 寄付する

ごみとして処分する

鍵盤ハーモニカは、メーカーによってサイズが違い、数万円する高級品もあります。
こういった機種は鍵盤が多く、サイズが大きくなっています。

学校でよく使用されている機種は、長さ425×幅96×高さ49mm(ヤマハ製P-32E)くらいのサイズが多いようです。

東京都など多くの自治体では、一番長い一辺が30cm以上を粗大ごみとして規定としていますので、粗大ごみとして出すことになります。
各自治体のルールに従って出しましょう。

寄付する

学校で使ったような一般的な鍵盤ハーモニカであれば、わざわざ業者に依頼するより、寄付してはいかがでしょうか?

NPOなど、寄付を受け付けている団体はたくさんあります。
その多くは、アジア地域の貧しい子どもたちに寄付されることが多いようです。

また、海外だけでなく、国内にも寄付することができます。
地震などの災害で被災した学校や生徒たちのために、鍵盤ハーモニカなど楽器の寄付を受け付けている団体があります。
子供たちが、こうした楽器に触れることで少しでも癒されれば嬉しいですよね。

楽器は、思ったよりも長く使うことができるものです。
特にアコースティックピアノは、木材をふんだんに使い、高級なもの。
できるだけ再生して、どこかの誰かの役にたてばいいですね。

相続が変わる! 配偶者の老後を安定させる法律改正の内容とは

2018年7月6日、相続法制を約40年ぶりに大幅に見直す改正民法が参院本会議で可決、成立しました。

相続分野の見直しは40年ぶりのこと。
前回、1980年には配偶者の法定相続分が3分の1から2分の1に引き上げられましたが、それ以来の相続制度の抜本改正となります。

この改正の主な目的は、「残された配偶者の老後の生活の安定化」だと言います。

高齢化が加速している現在、残された配偶者は長い年月を生きていかなくてはなりません。
また、これに合わせて「法務局における遺言書の保管等に関する法律」も成立しました。

この法律は、2022年春にも施行される予定です。円満な相続を迎えるために、ぜひ知っておきましょう。

配偶者居住権の創設

「配偶者居住権」とは、現在住んでいる家に、配偶者がそのまま住み続けることができるという権利です。

現状の制度では、被相続人が亡くなったあと、その配偶者が自宅(遺産分割の対象の建物)に住み続けるには、自宅の所有権を相続しなくてはなりませんでした。
すると、遺産分割で得られる他の財産(現金など)は、自宅の分、少なくなってしまいます。

そこで、この改正では、住宅の権利を「所有権」と「居住権」に分割しました。
残された配偶者は、この「居住権」を取得すれば、所有権が別の相続人や第三者に移ったとしても、そのまま自宅に住み続けることができるのです。

また、この「配偶者居住権」を利用すれば、自宅に住み続けられるだけでなく、生活資金も確保できます。

たとえば、被相続人の財産が1500万円の自宅と預貯金2500万円だとします。
この場合、現行の制度で配偶者が自宅の所有権を相続すると、預貯金は500万円しか得られないことになりますね。

しかし、配偶者居住権を行使すれば、所有権より低い割合で自宅に住み続けることができ、浮いた分は預貯金を相続できるのです。

また、配偶者が遺産分割の対象の建物に住んでいる場合、遺産分割が終了するまでは無償で住めるようにする「配偶者短期居住権」も新設されました。
配偶者短期居住権は、配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に認められます。

これにより、配偶者は当面の居住権を確保することができます。
ただし、相続開始の時において、この居住建物に関して配偶者居住権を取得したときは,この限りではありません。

配偶者間における住居の贈与

配偶者が生前贈与や遺言などで譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして、遺産分割の計算対象から除外します。
住居が特別受益と評価されないため、配偶者がその他の財産を受け取れないという事態が生じないのです。

この制度により、配偶者は住居を離れる必要がないだけではなく、他の財産の配分が増えるため、老後の生活を安定させることができます。
ただし、結婚期間が20年以上の夫婦に限定されるので注意が必要です。

金融機関の仮払い制度を創設

現行の制度では、被相続人の遺産は、亡くなった時点で相続人全員によって共有している状態となるため、銀行など金融機関は、遺産分割協議が成立するまで、原則として口座を凍結し、被相続人の預貯金の払戻や名義変更に応じません。

結果、被相続人が急逝した場合など、葬儀代や、残された配偶者の生活費など、必要なお金が引き出せず、困る人が多かったのです。
そのために、いざという時に備えて、被相続人の生前から家族信託などを取り決めることが必要でした。

そこで、今回の民法改正では、遺産分割協議が終わる前でも生活費や葬儀費用の支払いなどのために被相続人の預貯金を金融機関から引き出しやすくする「仮払制度」を創設しました。
これにより、生活資金や葬儀代などを被相続人の預貯金から支払うことが可能となります。

相続の不公平感の是正

この改正では、被相続人の生前、介護や看病で貢献した親族に考慮した制度が創設されます。

たとえば息子の妻などが被相続人の介護や看病をするケースは多々あります。
また、6親等以内の親族(いとこの孫ら)以内の血族と、3親等(姪や甥)以内の配偶者が介護などに尽力するというケースもあるでしょう。

しかし、これらの人々は法定相続人ではないため、現行法では被相続人による遺言がない限り、どんなに介護や看病を一所懸命行っても遺産分割という形での報酬は一切受けることができませんでした。

新たな改正案では、法定相続人(被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹)ではない親族でも、被相続人の介護や看病に貢献した場合は金銭を請求できるようになります。

ただし、親族のみが対象となるので、家政婦や近所の人、事実婚や内縁など、戸籍上の親族でない人は請求できません。
これらの人に相続させたい場合は、従来通り被相続人の遺言が必要となります。

「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立①

新しく、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が創設されました。

これまで、被相続人が作成した自筆証書遺言は、自宅で保管するか弁護士に預かってもらうことしかできませんでした。

自筆証書遺言は、遺言書の存在が相続から何年も経過した後に発見されて遺産分割協議がやり直しになったり、相続人が勝手に破棄したり、また偽造したり、そもそも紛失してしまったりするなど、遺言の内容が執行されない危険性が高く、トラブルに発展するケースが非常に多いものでした。

そこで、このような事態を避けるため、法務局が自筆証書遺言を保管する制度を設けます。

作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことにより、紛失や偽造など、遺言書に関するリスクは少なくなると考えられます。
また、公的機関である全国の法務局で保管すれば、相続人が遺言の有無をすぐに調べられるようになります。

「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立②

これまで、自筆証書遺言は家庭裁判所における「検認」(民法1004条)が必要でしたが、これについても見直しされます。

自宅で自筆証書遺言が見つかった場合、今までは法定相続人全員の立ち会いのもと、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要でした。

検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出し、法定相続人などの立会いのもと遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することです。

これまでは、この手続きをしないと遺言書の内容を確認することができませんでした。
しかし、新たな改正案では検認手続きが不要となるため、速やかな遺言の執行、相続手続きの時間短縮が期待できます。

財産目録のパソコン作成が可能に

自筆証書遺言は手書きで作成しなくてはならないので、財産目録についても手書きしなくてはなりませんでした。

財産目録とは、被相続人の一覧としてまとめたものです。
預貯金や不動産などプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も対象となります。

財産目録の作成は義務ではないため、必ずしも作成しなければならないわけではありませんが、スムーズな相続のためには必要な書類です。

とはいえ、目録を手書きするのは非常に手間がかかる場合があります。
そのため、改正案では、財産目録の部分のみは手書きでなくてもよく、パソコンなどで作成できるようになります。

改正法の施行はいつから?

改正民法は、それぞれ次の日から施行されます。

配偶者居住権

公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日

自筆証書遺言の方式緩和

公布の日から6か月を経過した日から

婚姻20年以上の夫婦の優遇策、仮払い制度など

公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日

法律は、その成立後、後議院の議長から内閣を経由して奏上された日から30日以内に公布されます。

法律の公布にあたっては、公布のための閣議決定を経た上、官報に掲載されます。
官報には、公布された法律について「法令のあらまし」が掲載されますので、目を通しておくとよいでしょう。
官報はインターネットで閲覧することができます。

円満な相続を迎えるために・・・

いかがでしょうか? この改正によって、相続はガラリと変わります。

内容を見ると、残された配偶者に対してかなり手厚くなっていることがわかるのではないでしょうか。
これは、少子高齢化社会が背景にあり、高齢者の老後の生活安定を見据えての改正と考えられます。
ぜひ正しく理解して、円満な相続を迎えましょう。

孤独死保険!? 高齢化社会から生まれた生前整理の必要性と保険について

誰にも看取ってもらえず、ただ一人ひっそりと最期を迎える孤独死。

平均寿命は伸び、医療は進歩し、未婚率が高くなっている現在。
当然の結果として、1人暮らしをする「独居老人」が増えています。

内閣府の調査によると、2000年に約300万人だった65歳以上の独居老人は、わずか5年で2015年には約600万人へ倍増しています。

そんな状況のなか、孤独死が社会問題になっているわけです。
そこで、保険各社が販売する「孤独死保険」が注目されています。
これは一体どんなものなのでしょうか?

「孤独死」の現状

  • 孤独死とは
  • 孤独死の現場とは

孤独死とは

孤独死の原因は、脳出血や室内での転倒、心臓発作やヒートショックなどさまざまです。
このように、突発的な傷病で誰にも看取られることなく亡くなることを「孤独死」といいます。

1人暮らしの高齢者にはご近所づきあいや友人の少ない人、社会やコミュニティから孤立している人も多いようです。
そこで発見が早ければ助かっていたケースや、亡くなったことを誰にも気付いてもらえず、日数が経過してから遺体が発見されるケースもあります。

孤独死の現場とは

孤独死に気づくのは、同じ集合住宅に住んでいる人や、近隣の住人などが多いようです。
悪臭が漂い、急に害虫やネズミなどが増える。
どうもおかしいと通報すると、住人が孤独死していたという具合です。

特に夏季は臭いなどの被害がひどく、発見が遅かった場合は部屋を開けると、嗅いだことのないような独特の臭いが鼻をつき、無数のハエの死骸とウジ、ハエの蛹が大量に転がっているといいます。

もちろん人間の遺体は警察によって運び出されていますが、故人が倒れていた後にはタールのようにどす黒い液体や、腐敗した皮膚のようなものが残されているといいます。

これらの体液などは、部屋にどんどん染み込んでいきます。
なかには、4階で亡くなった人の体液が、3階を通過して2階の天井まで染み出したケースもあるといいます。

ハエの駆除だけでも大変な手間がかかり、このような部屋を完全に綺麗にするには、部屋全体をリフォームするしかなくなってしまうのです。

孤独死の後始末

  • 事故物件
  • 心理的瑕疵
  • 事故物件の後始末は誰がするの?

事故物件

専門のサイトなどから「事故物件」という言葉が知られるようになっていますね。
不動産取引や賃貸借契約の対象となる土地・建物や、アパート・マンションなどで、その物件の本体部分もしくは共用部分のいずれかにおいて、何らかの原因で前居住者が死亡した経歴のあるものをいいます。

事故物件として扱われるのは、次のようなケースが挙げられます。

  • 殺人、傷害致死、火災(放火ないし失火)などの刑事事件に該当する事柄で死者の出た物件
  • 事件性のない事故、自殺、災害(地震による崩壊など)、孤独死などで居住者が死亡した物件

これらは、いわゆる「心理的瑕疵」に該当します。
つまり、事件・事故の影響で精神的・心理的に、その部屋の住みにくい状況です。

心理的瑕疵

一度事故物件になると、次の入居者への告知義務が生じます。
そのため、なかなか次の入居者が見つけられず、家賃を下げたり、応募が途絶えたり、大家さんにとっては非常に困った状態になります。

告知義務には期限がなく、「事故」が起きてからどれくらいの期間告知を続けるのかはケースバイケースだそうです。
一度、だれかが借りれば、次の人には告知しない大家さんや、ずっと伝え続ける大家さんなど、いろいろな人がいるようです。

事故物件の後始末は誰がするの?

もしも、孤独死によって遺体が死後何日も経過していた場合、遺体の腐敗によって物件が汚損してしまいます。
部屋を元の状態へ回復するためには特殊な技術が必要となります。

繰り返しになりますが、高齢者に多い「汚部屋」「ごみ屋敷」問題もあります。

年齢を重ねるごとに体力・気力が衰え、自炊しなくなり、コンビニ弁当の空きパックや、ペットボトルをまとめて捨てることもできなくなり、しなくなる。
ゴミが散乱する部屋は、高齢者に多いようです。

 

この大量のゴミを、いったい誰が始末するのでしょうか?
孤独死の場合、保証人と連絡が取れないケースが多いようです。

また、亡くなった人が天涯孤独だった場合、部屋の現状回復から遺品処理、ゴミ処理に至るまで、結局、すべてを大家さんが背負うことになり、大家さんは大きな負担を強いられることになるのです。

「孤独死対策保険」――大家さんのための保険

1人暮らしの高齢者の増大、孤独死の増加……。
このような社会状況のため、高齢者の入居に拒否感や不安感がある大家さんは6割を超えているそうです(国土交通省調べ)。

でも、今後ますます老人大国となっていく日本。
高齢者であるという理由で部屋を借りられなかったら困りますよね。

そこで、2011年ごろから、家主が貸借人の孤独死で被るリスクをカバーする保険が登場し始めました。
これらは「孤独死保険」「孤独死対策保険」と呼ばれています。

  • 大家さんが支払う保険
  • 入居者が支払う保険

大家さんが支払う保険

大家さんが自分で掛け金を支払い、事故があったときに保障を受けるタイプの保険です。

2015年10月、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、大家さんを対象にした火災保険の特約・付帯サービスとして「家主費用・利益保険」の共同販売を始めました。
孤独死が発生した際の補償内容の一例を挙げると、

  • 遺品整理など・・・「事故対応費用」として最大10万円
  • 敷金を超える清掃・修復など・・・「原状回復費用」として最大100万円
  • 事故後に借り手がつかず空室となった場合の減収分・・・賃料の80%を最大12か月間

といった保障金が大家さんに支払われます。

東京海上日動火災保険も「孤独死対策プラン」を販売しています。

「孤独死対策プラン」は、「家主費用・利益保険」と「企業総合保険(家賃補償特約)」をセットにした商品で、このうち「家主費用・利益保険」部分で孤独死や自殺、犯罪死の発生に伴う家賃損失、費用などを補償します。

原状回復・事故対応費用は、事故発見日から180日以内に被保険者が支出した費用が対象となっており、原状回復費用と事故対応費用などを合計して1回の事故につき、100万円を限度として補償します(契約内容により限度額は変更OK)。

こちらは事故対応費用として「お祓い」や「供養」の費用まで認められている点が特徴です。

入居者が支払う保険

「孤独死保険」が発売され始めた頃は、こういった保険は大家さんが掛け、支払う保険がほとんどでした。
しかし最近では、入居者が掛け、事故があった場合に大家さんに保険金が支払われる保険が出てきています。

ジック少額短期保険が、2014年に家財保険のオプションとして販売を始めた「孤立死原状回復費用特約」は、3年ほどで契約件数が1万5000件を超えているそうです。
保険料は2年間2000円で、万一の補償は最大50万円だそうです。

こちらの保険は、高齢で身寄りのない方が賃貸物件に入居を希望する際、大家さんが保険の加入を条件にするケースが多いとのこと。
入居者からすれば、「あなたは孤独死しそうな人です」とレッテルを貼られたようなものです。
でも、大家さんからすれば切実です。加入しなければ入居はしてもらえない……それほど「孤独死」の問題は大きな問題なのです。

入居者側が支払う保険としては、少額の火災保険に「孤立死原状回復費用特約」を付加できるものもあります。
この特約を付けることで、入居者に万一の事態が起こった時、大家さんが原状回復費用を補償してもらえるわけです。

少額短期保険会社と共同で保険商品を開発したNPO法人もあります。
この保険では、入居者が加入時の年齢によって異なる金額の保険料を払います。

この保険は、本人が亡くなったあとの遺品整理や修繕だけでなく、葬儀や納骨までカバーしています。
また、身寄りがない人のため、この法人など第三者を保険金の受取人とすることができます。

このように、入居者が保険料を負担することで孤独死のリスクを軽減できれば、大家さんが高齢者の入居を敬遠する理由が減ることになります。
また、今は若くても、そのまま住み続けていれば、いつかは高齢の単身者になります。

こうした個人向けの孤独死対策保険は、大家さん向けの商品も、入居者自身が備える商品も、今後さらに増えていくでしょう。

生前整理をしましょう

社会問題となっている孤独死。
でも、孤独死は今後ますます増えていくと考えられています。

厚生労働省が発表した平成28年の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳。
これは過去最高の数字で、世界では香港に次いで2位という結果でした。

また、生涯未婚率も年々高くなり、1人暮らしの高齢者は増えることはあっても減ることはなさそうです。

こんな現代だからこそ、生前整理をしておきたいもの。
孤独死なんて誰もしたくないし、事件にだって遭いたくないに決まっています。
でも、この世の中、いつ何が起こるかわかりません。

だからこそ、生前整理をしておきたいもの。
暗く考えるのではなく、これまでの自分を振り返り、整理すると考えてみてはいかがでしょうか?
少しでも、この先の人生を明るく身軽に生きていくために。
その時に、ぜひ孤独死保険についても考えてみてくださいね。

遺品整理で処分に困るものについて

遺品整理作業のなかで、遺族としては意外なものや処分しにくいものが出てくることは、多々あります。
突然死を迎えた故人の部屋ですと、生前に片付けが行われていない状態で遺品整理が始まるのですから、致し方ないことしょう。
もしかしたら遺族も知らなかった故人の生活が見えてくるかもしれません。
今回はそんな遺品整理で出てくる意外なものや処分しにくいものが出てきた場合の対処法をご紹介します。

意外と多い現金や商品券

デジタル化が進み、電子マネーが普及した現代は、給与もほぼ銀行振込です。
多くのお店でクレジットカードが使えますし、PASMOやSuicaなど交通系ICカードで買い物ができるようになりました。スマートフォンの普及も、そんな状況に拍車をかけています。
いまや昔のような「給料袋」を見たことがないという人のほうが多いでしょう。結果、手元に高額の現金を残しておくことは、ほとんどありません。
それでも遺品整理の際に、故人がしまっておいた現金が見つかることはあります。特に故人がキャッシュカード、ATMを使う機会の少ない世代であったらなおさらです。
当然、現金を人目につく場所に放置していることはなく、タンスの奥や引き出しなどに「隠している」ようなケースが多い。しかも高額です。作業中に、タンスの奥から十数万の現金が出てきたこともあります。
また十数万円ぶんの商品券や、ビール券が何十枚も見つかった現場もありました。きっと故人は多くの人からお中元やお歳暮などが贈られる、交友関係の広い方だったのでしょう。
そういった故人の人柄が偲ばれる品々ではありますが、遺族にとっては対応に困るものだとも言えます。

 

まず現金は、高額であれば相続の対象となる場合もありますが、十数万円であれば遺族の間でしっかり分けるようにすると、後々のトラブルを防ぐことにも繋がります。
商品券やビール券も同様ですが、こちらは金券ショップに持ち込むこともできます。
例を挙げると、全国百貨店共通商品券は大手の金券ショップであれば98%前後で買い取ってくれます。有名百貨店の商品券も最低でも96~97%で取り引きされています。
ビール券はほとんど額面と変わらない価格で買い取ってくれる店もあるほどの人気商品。
ただし、券が折れ曲がっていたり、汚れていたりすると買い取り価格は下がります。
片付ける時に誤って商品券をグシャっとまとめたりすることのないように。
遺品整理においては、何でも一つひとつ丁寧に片付けていくことが重要です。

食品・調味料は基本的に全て廃棄!

遺族が引き取りにくいものの代表例が、食品や調味料、油といったものです。
食品は生のものや賞味期限切れのものなど悪臭のもととなり、ご近所の方たちに迷惑をかける要因ともなります。
これらは基本的に「全て廃棄」と考えて良いものでしょう。

まずは冷蔵庫・冷凍庫の中身をチェック。生鮮食品の賞味期限を確認し、期限切れのものからどんどん処分していきます。
特に大きなものから捨てていくと冷蔵庫・冷凍庫の中がスッキリし、作業効率もさらに高まります。
続いて調味料ですが、「長持ちするものだから取っておこう」という考えは禁物です。
ほとんどの調味料はどの家庭にも置かれているものなので、引き取っても結局使わず、ごみになることが少なくありません。
であれば、遺品整理の時点で処分しておくほうが、後々の面倒な手間も省けます。

注意しなければならないのは、その処分方法です。
液体の調味料は新聞紙やボロ布に吸い込ませて、それを可燃ごみとして処分できます。必ずペットボトルをはじめとする入れ物とは別にしましょう。
油も市販の凝固剤で固めてしまえば可燃ごみになります。
排水溝に流して捨てるのは厳禁です。油が排水溝に付着して火事の原因となることもあります。
もちろんそのまま流れても環境破壊のにも繋がります。油を使う飲食店や工場などの業者であれば、廃棄方法は「廃棄物処理法」で規定されており、違反するともちろん罰則が与えられるほどなのです。

油といえば、昔の家屋にはたいてい備え置かれていた灯油は、「特別管理廃棄物」にあたります。環境省のサイトでは、次のように規定されています。

「廃棄物処理法では、『爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物』を特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物(以下、「特別管理廃棄物」という。)として規定し、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っています」

特別管理廃棄物の多くは、一般家庭ではなく工場や飲食店、あるいは病院に置かれているような特殊な薬品、爆発のおそれのある油などです。処分にも専門の資格が必要です。
しかし灯油のように一般家庭でも使われているものも特別管理廃棄物として指定されてる場合もあるので、処分は必ず専門業者にお願いしましょう。

医薬品は必ず専門家に相談を!

医薬品は市販のものであれ、病院で医師に処方されたものであれ、これも基本的には「全て廃棄」が望ましいでしょう。
処方薬はもちろん、市販の薬でも人によって合うもの・合わないものがあります。未開封ならまだしも、開封後の医薬品は食品と同じリスクがあるので廃棄します。
病院から処方された薬であれば、どう処分すれば良いのかその病院に問い合わせてみてください。
自分で廃棄して良いものもあれば、病院や薬局に戻したほうが良い薬もあります。
薬の投与のため、自宅に注射器を置いている方もいます。
病院であれば法律により「感染性廃棄物」として廃棄物処理法に基づき専門業者が処分しなければなりませんが、一般家庭では「在宅医療廃棄物」となり、一般ごみとして廃棄することができます。
いずれにしても遺品整理は何事も全て自分で判断することなく、専門家に相談することも大切です。

 

消火器はリサイクルに!

昔は多くの家に必ずひとつ、消火器があったのではないでしょうか。
もし遺品整理で消火器が出てきた場合も、特別な対処が必要となります。
消火器の使用期限は10年。期限内のものであれば他の人が引き取ることもできます。
期限が切れている場合は、国内メーカーの商品であればリサイクルが可能です。
まずは「消火器リサイクル推進センター」に問い合わせ、引き取り・持ち込みが可能な日時や場所を決め、費用を確認し、処分することになります。

自動車・バイク・自転車は名義や登録に注意!

これは高額な遺品全てに言えることですが、自動車やバイクについても考えなければいけないのは、相続です。
故人の自動車やバイクについては、最初に「相続」か「廃棄」かを決めます。その後、どちらを選ぶにしても法的な手続きを行わなければいけません。
自動車の場合、まずは名義変更ですが、元の所有者が亡くなった場合の名義変更は手続きがやや複雑になってしまうのでご注意ください。
通常の名義変更に加えて、故人や遺産に関する書類も必要となってくるのです。
故人の戸籍謄本、印鑑、住民票、遺品相続人全員の実印が押されている遺産分割協議書が、その必要書類にあたります。
これは「相続」でも「廃棄」でも同じ。自動車車を廃棄、廃車にする場合も、一度相続人の名義に変更し、その相続人しか廃棄処分を行えないからです。

一方、バイクは引き取るにも廃棄するにも、一度「廃車」の手続きが必要です。
バイクに付いているナンバプレートを管轄する市区町村の役所で手続きを行うと同時に、保険会社に対して自賠責保険の解約も行うことになります。

上記の自動車やバイクは、中古業者が引き取るうえで法的な手続きを行ってくれる場合もありますので、問い合わせの時に確認したほうが良いでしょう。

所有率が最も高い自転車は、リサイクルショップに売るか、粗大ごみとして廃棄することになりますが、どちらの場合も「防犯登録の抹消」が必要です。
各都道府県の警察署の生活安全課へ、防犯登録カードと登録者の身分証明書を持っていき、手続きを行います。
自転車を購入する際、そのお店で防犯登録を行ってくれているケースも多いので、購入したお店がわかれば問い合わせてみましょう。

故人の趣味①刀剣、銃

遺品のリサイクル・リユースについては、各業者に問い合わせたり、査定をお願いして買い取り・回収を行ってもらいます。
しかし、一部には大きなトラブルの要因となるものがあります。その代表例が刀剣、銃といった類いのものです。
趣味として日本刀や猟銃を持っている人は多いのですが、基本的にそれらは許可を得ているものであり、許可を得ずに所持している場合は「銃砲刀剣類所持等取締法」(いわゆる銃刀法)違反となり、罰則が課されます。
故人が許可を得て所持しているものは、まず警察に届け出て、教育委員会の審査に通れば、遺族が保管することもできます。許可証などがあれば、名義変更も行えます。
ただ、この届け出を行わないまま長期間に渡って遺族や他の人が持ったままだと、銃刀法違反となってしまう可能性もあるので気をつけてください。
もちろん法律に乗っ取り、許可証を返納し、刀剣や銃そのものも手放すことも可能です。警察に処分をお願いすることもできますので、遺品のなかに刀剣や銃があった場合は必ず速やかに警察署へ届け出ましょう。

故人の趣味②わいせつ物

もうひとつ、遺品整理で実際にあるのは、故人の遺品から「わいせつな雑誌やDVD」が見つかるケースです。
故人が趣味としてそういった物を持っていることを遺族がご存知の場合は、特に問題はありません。
ところが、たとえば「亡くなったお父さんは、そういうものに一切興味がないと思っていたのに」と、生前のイメージと異なるため遺族がショックを受ける、といった実例があるのです。
紙類は可燃ごみとして処分しますが、DVDやそのケースは専用シュレッダーなどで細かくする必要もあるでしょう。

さらに遺族が困るものとして、故人の写真やパソコン、携帯電話などのデータがあります。
何かといえば、そこに遺族が知らなかった故人の人間関係が残っているからです。
極端な例としては、知らない異性との関係が写っている写真、あるいはメールといったものです。
遺族としては知りたくなかった事実かもしれません。特に父親が亡くなった際、そうしたものが出てきても、ただでさえ気持ちが落ち込んでいる奥様には見せられないでしょう。
その場合は、見つけた人が誰にもわからないようにコッソリと捨てておくこともあります。

とはいえ、見つけた人にとっても悲しい事実かもしれません。
遺品整理とは、故人の人生に関する新たな発見を伴います。それが良いものであっても、知りたくないことであったとしても。


遺品整理士も、このような場面に遭遇することはあります。
しかしプロフェッショナルの遺品整理士は事前に故人や遺族の生活や人間関係を把握し、それを踏まえて何かを発見してもその場に応じた対応を行います。
現場で遺族に見せないほうが良いものは一度、遺品整理士のほうで保管し、後日遺族に処分をご相談させていただくこともあります。
遺品整理において最も重要なのは、故人と遺族の気持ちです。これを無視して作業を進めることはできません。時に作業だけでなく、心のケアに関するご相談も受けます。
そうした配慮もまた、プロの遺品整理士にとって重要な資質なのです。

遺品整理でお困りのことがあれば、まずは遺品整理士や専門業者に相談してみてください。

生前整理とは違う、福祉整理について

多くの人を悩ませる、ごみ屋敷や汚宅問題。メディアにも頻繁に取り上げられるようになり、広く知られるようになりました。
そこから、「終活」「生前整理」「老前整理」など様々な言葉が生まれました。そのなかで最近出て来たのが、「福祉整理」です。
比較的新しく出てきた「福祉整理」。その内容・意義と、他の整理との違いは何でしょうか。

高齢になると、片付けができなくなるの?

そもそも、年齢を重ねると、なぜ片付けができなくなってしまうのでしょうか。その理由を考えてみましょう。

  • 「捨てる=悪」の道徳観
  • 「もったいない」の価値観
  • 体力・気力の衰え
  • 「思い出」を捨てられない
  • 家に人を呼ばなくなる
  • 他人に自分の領域を荒らされたくない
  • セルフネグレクト
  • ためこみ障害

「捨てる=悪」の道徳観

包装紙や紙袋、洗剤の計量スプーン、広告紙や空き箱、果ては壊れた家電まで……。おそらく使うことはないのに、「物を捨てる」ということに強い罪悪感を覚え、溜め込んでいる高齢者は少なくありません。
特に、買ったとき値段が高かったものが、使われずにそのまま残っていることがあります。

高かったから、もったいなくてなかなか下ろせない。使っていないけれど、高かったものだから捨てられない、というわけです。
また、引き出物や景品などのいただき物を捨てられずに置いてあるケースもよく見られます。

モノのなかった昔は、布ひとつでも捨てずに再利用して、最後は雑巾として使い、ボロボロになってから捨てるのが当たり前でした。
こういった道徳観は決して悪いことではありませんが、捨てるときは捨てる、というように、なかなか柔軟に対応できない高齢者が多いようです。

体力・気力の衰え

親御さんが、腰が痛い、ひざが痛いと言うのを聞いたことはないでしょうか。
年齢を重ねると足腰が弱くなって、身体を曲げ伸ばしするのが大変になってくるのです。
そのため、モノを動かすという動作が億劫になっていきます。
散らかる部屋を見て「これではいけない」と頭では解っていても、重い腰を上げられず、そのうち、散らかった状態に慣れたり諦めたりして、「汚部屋」が出来上がっていくわけです。

また、気力の衰えも出て来ます。体力低下に伴うものだけでなく、子供たちが独立して気が抜けたり、伴侶を亡くしたりという理由が多いようです。
ご主人に先立たれた奥さまが、それまできちんとしていた家事を放棄し、ごみ屋敷となるケースがよく見られます。
逆に、奥さまを亡くされたご主人の場合は、もともと家事をする男性が少ない世代でもあり、ごみ屋敷化がさらに加速してしまいます。

また、今は、ごみの分別が複雑なため、ごみを捨てる気力がなくなってしまう人もいるようです。

 

「思い出」を捨てられない

子どもが独立し、親を見送り、やっと自分だけの時間が取れるようになった世代。そんなエアポケットのような時期に思い出すのが、懐かしい昔のことです。
亡き親からもらったものや、親族の形見、若い頃気に入っていた服やアクセサリー。子供のベビー服や作品、写真など、思い出を捨ててしまうようで処分できない人が多いようです。

家に人を呼ばなくなる

家の玄関は、家の「顔」。誰かが訪ねてきたときに、まず目にする場所ですね。
親が若かったころは、毎日家のまわりのゴミを拾ったり、水を撒いたりしてきれいにしていたことでしょう。特に来客があるときは、恥ずかしくないよう念入りに掃除をしたはずです。

また、道路から見える場所にある庭にも気を遣うものです。庭木を美しく剪定したり、道に散らかった落ち葉を片付けたりと、きれいにしますね。
人を招こうという気持ちが下がってくると、玄関や庭が散らかり始めます。毎日、掃除することができない、また、する気持ちもなくなっているわけです。

他人に自分の領域を荒らされたくない

家や部屋を整理されることを嫌がる高齢者は少なくありません。
散らかっていようが、自分の部屋にあるモノは自分のモノだから、他人に「要・不要」を決定される筋合いはないというわけです。

特に、親御さん自身が片付けの必要を感じていない場合、「今要るから置いているモノ」なのに、たとえ子供であっても、人から「捨てましょう」などと言われたくない。高齢者になるほど、この傾向は強まるようです。

セルフネグレクト

最近よく聞くようになった言葉に「セルフネグレクト」という現象があります。
セルフネグレクトとは、自分自身の生活に対して「やる気」をなくしてしまい、全てを放棄してしまうことです。

 

精神的に不安定になり、生活が荒れてしまうセルフネグレクト。自分の殻に閉じこもり、心に壁を作りプライドが高くなります。
もしも第三者が勝手に掃除したり、口出ししてきたりすると激しく抵抗し、非常に攻撃的になることがあります。
そんななかで、アルコールに依存したり、酒類の空き容器や弁当ガラなどがどんどん増えていき、ついにはゴミ屋敷となることがあります。

ためこみ障害

本当はそんなにたくさんの食材はいらないはずなのに、食材を切らすといけない気がして大量に買ってしまう。その結果、使いきれずに腐らせてしまったり、傷みかけた食品を食べて健康を害してしまったりする人も少なくありません。

まだあるのに、トイレットペーパーやティッシュペーパー、石けんやシャンプー、洗剤などといった生活用品をつい買ってしまうことはないでしょうか。腐らないものほど、買いだめをする高齢者が多いようです。

あまりにもモノを捨てられない、また、モノがないと不安でたまらない人は、「ためこみ障害」という心の病気を抱えている可能性があります。
家の中が足の踏み場もない状態になるようなら、精神科(神経科)を受診し、心理療法などで解決していくことが必要かも知れません。

「福祉整理」とは?

 

超高齢社会を迎え、「おひとりさま」の高齢者が激増しています。さらに、認知症を発症したり、身体の自由が利かなくなったりする人も増えています。
自分で身の回りのことができなくなった高齢者は、次第に劣悪になる環境の中で生活していかなくてはならなくなります。
「福祉整理」とは、介護や福祉に関わり、高齢者が健全な生活を続けるために住環境を整えることをいいます。

  • 施設入居・入院に伴う家財整理・撤去
  • 認知症の人の住環境整理
  • 自宅介護のための不用品整理
  • 定期的なハウスクリーニング

施設入居・入院に伴う家財整理・撤去

介護施設に入居したり、末期がんなどで入院すると、再び自宅に帰って生活することはほぼなくなります。施設や病院には最低限のものしか置けないため、これまで暮らしていた自宅や部屋を整理する必要が出て来ます。
入所・入院が必要な状態なので、もちろん高齢者自身で部屋を片付けることはできません。そんなとき、本人に代わって家財道具を整理・撤去します。

認知症の人の住環境整理

認知症で、家の中を汚したり、徘徊してごみや不用品を集めてきたりという行動をするようになることがあります。こういった高齢者が、ごみや汚物の中で暮らしているといったケースも少なくありません。
1人暮らしが難しくなった高齢者が、清潔で健康な生活を営めるよう、ごみを捨て、片付けをします。

 

自宅介護のための不用品整理

自宅で介護生活を送る人のための住環境を整えます。あまりにモノが溢れ、また、ごみ屋敷状態になっていると、介護する人が家に入ることができないでしょう。
また、介護用ベッドを入れる必要がある場合、まずは自宅を片付けて、ベッドを置く場所を作らなくてはなりません。
介護する人・される人が、双方気持ち良く生活するために不用品やごみを片付けます。

定期的なハウスクリーニング

要介護でなくても、自分で片付けや整理が難しい高齢者は増えています。
こういった人が安心して健康な毎日を送れるようにするため、定期的に整理やハウスクリーニングを依頼します。
少し汚れたり、ごみが溜まったりしても、定期的に片付けてもらえれば安心です。

遺品整理・生前整理との違い

「遺品整理」とは、故人が亡くなった後、遺したものや愛用品を整理することです。
不用品を仕分けし、必要なものを残しますが、遺言書があればその内容に沿って行う必要があります。
近年、耳にする「生前整理」「老前整理」は、「遺品整理」を本人が生きているうちに行うことです。自分にもしものことがあった場合、家族や親族に迷惑をかけないため、生きているうちに財産やものを整理しておきます。

これに対し、「福祉整理」は、部屋の衛生や健康な生活環境を整えることです。
部屋の整理という点では同じですが、将来来るであろう「死」を意識して行うというよりは、現在の生活を整備し、より良く生きていこうと「生」を意識して行われます。社会的・福祉的側面が強い整理であるといえます。

福祉整理の効用

 

福祉整理には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

  • 部屋の中の危険がなくなる
  • 衛生的になる
  • 短時間で片付き、処分の手間が省ける
  • 離れて暮らす家族も安心できる

部屋の中の危険がなくなる

片付いていない部屋には、危険がいっぱいです。
年を取れば取るほど、身動きが取れなくなっていきます。
高齢者は、足もとのモノが見えにくいことがあり、少し出ているコードや散らかったモノに足を引っかけたり、ちょっとした段差に対応できず、転倒・骨折するといった事故が頻繁に起きています。

また、高いところにあるモノを取ろうとして転んだり、なだれ落ちてきたモノでケガをしたりする事故も後を絶ちません。
福祉整理をして部屋が片付けば、こういった危険をグンと減らすことができます。

衛生的になる

ごみだらけで腐臭が漂い、害虫がゾロゾロと湧く中での生活……普通は、想像するだけでゾッとしますよね。
でも、体力・気力が衰えてしまった高齢者は、自分で整理整頓することができません。また、認知症などでものの判断が難しい場合があります。
そのため、決して望んでいるわけではないのに、衛生状態の悪い部屋で生活せざるを得なくなる人が増えています。

当たり前ですが、ごみだらけの部屋は衛生的によくありません。ごみやホコリは、ダニなどの害虫が好む環境です。汚部屋で暮らしていると、呼吸器系をやられ、健康を確実に損ないます。
福祉整理を利用すれば、体力が弱っている高齢の方が風邪や病気にかかるリスクを低くすることができます。

短時間で片付き、処分の手間が省ける

プロに整理を依頼すれば、短い時間で片付けてくれます。汚れの程度によっては、高齢者がデイサービスや病院に通っている間に清掃しておいてもらうこともできます。

もちろん、清掃に立ち合えますので、捨ててほしくないものがあれば立ち合って指示するとよいでしょう。
業者に依頼すれば、ごみなどはすべて処分してくれます。自分で分別する必要もないためラクです。まだ使える不用品があれば買い取ってもらうこともできるので、確認してみましょう。

離れて暮らす家族も安心できる

親御さんと離れて暮らしている家族なら、自分が帰り、親御さんと話し合いながらモノを整理するのが理想でしょう。
でも、離れて暮らす子供にとって、親の家(実家)を片付けるというのは大変な作業です。遠方に住んでいる場合は特にそうでしょう。モノの整理には、時間も費用も労力もかかります。
そんなときに、福祉整理を利用するとよいでしょう。プロの技術により短時間で清掃してくれ、不用品も処分してもらえます。

なぜ遺品整理の仕事があるのか

遺品整理の仕事をしているなかでよく頭に浮かぶのは、「人は何のために生まれてきたのか」ということです。
いろいろ考えますが、やはり行き着くのは「人は幸せになるために生まれてきたはず」ということ。現実には必ずしもそうとは限らないので、余計にそう思うのでしょうか。

でも、ご本人さまにも、遺族の方にも、少しでも幸せに、健康に生きていただくために、また、亡くなったあとにも「これでよかった」と喜んでいただくために、私たちは仕事をしています。
遺品整理、生前・老前整理、福祉整理、何でもご相談ください。

特殊清掃とは?清掃内容等を解説!

遺品整理と同様、特殊清掃も世間的に認知度が高まってきているということなのでしょう。

そんな特殊清掃についてみていきましょう。

 

特殊清掃とは?

まずは、特殊清掃というものについて、詳しくご説明します。

  • 特殊清掃って何?
  • 特殊清掃の基本的な業務内容とは?
  • 特殊清掃は自分で行える?
  • 特殊清掃を仕事にするには?

特殊清掃って何?

「特殊清掃」とは、清掃業の中のひとつの形態です。
「事件現場清掃業」とも呼ばれますが、それは、主に事件や事故、自殺、孤独死などがあった部屋を清掃するからです。

近年、急増しているのが、一人暮らしの高齢者の病死、また自殺や突然死などです。
一人暮らしの高齢者は周りとの交流がない人が多く、孤独死してしまっても周囲になかなか気づかれません。そして、そのまま長い時間が過ぎてしまうケースが増えています。

遺体は、発見が遅くなればなるほど腐敗し、室内のダメージが深くなっていきます。
遺体まわりの汚れだけでなく、部屋の隅々まで腐敗臭が染み込むなど、部屋が悲惨な状況となっていくわけです。

また、孤独死でない場合でも、いわゆる「ごみ屋敷」では、長年の汚れが染み付き、害虫なども発生し、酷い状況になっている住居が少なくありません。

部屋がこうなってしまったら、原状回復が必要になります。特に賃貸の場合は、部屋を明け渡さなくてはならず、急を要するケースが少なくありません。
しかし、このような場合、一般的な清掃作業では原状回復は望めず、素人にはとても対処ができないのです。

このようなとき活躍するのが特殊清掃です。様々な知識や技術を駆使し、管理会社や大家さんに明け渡せる状態に戻します。

特殊清掃の基本的な業務内容とは?

現場の状態によって必要な作業は異なりますが、基本的に行なわれている特殊清掃は以下のような内容です。

害虫駆除

遺体の腐乱が進むと、ウジやハエ、ゴキブリなどの害虫が大量に発生します。
これらの害虫を薬剤で駆除し、再発しないよう防止処置を施します。

室内の清掃・死臭元の撤去

まず室内を清掃し、遺体から出た血液や体液、汚物などで汚れた布団や畳などを撤去します。
死臭元は布団である場合が多いですが、畳や床板、フローリングまで死臭が染みついている場合があります。

 

感染症予防

汚れた部屋の空間には、細菌やウイルスが漂っています。血液などに誤って触れてしまうと、感染症を引き起こすことがあります。
専用酸化剤などを散布し、これらを死滅させて感染症を予防します。
また、撤去できないフローリングなどに染みついた体液をできる限り落とします。

特殊清掃用の薬品の使用

特殊清掃用に作られた消臭剤や消毒剤を使い、臭気を除去していきます。また、滅菌します。

遺品整理

故人の思い出の品や貴重品を仕分けていき、遺品を整理します。
業者によっては、不用だけれどまだ使えるものがあれば、リサイクル品として買い取りしてくれたり、自動車などの廃車手続きなどを代行してくれます。

不用品処分

故人の部屋を片付けると、大量の不用品が発生することがほとんどです。
家庭ごみから粗大ごみまで、さまざまな不用品を処分します。

リフォーム

長い間放置された遺体が発見された周辺は、消臭作業をしても原状回復に至らず、リフォームが必要となります。
特に、畳み受けの板や床材の内部まで液体が染み込んでいた場合、内装工事をするしかないケースがほとんどです。

特殊清掃は自分で行える?

特殊清掃を自分で行うことは無理です。
一番は臭気。慣れた業者でないと、腐臭に耐えられません。また、遺体はなくても、この場にいることが精神的に耐えられない遺族も多いようです。

このような大掛かりな清掃はご近所になるべく知られたくないものですが、素人では近隣にわからないよう行うことは難しいでしょう。

感染症などを防ぐためには防護服が必要となります。さらに、消毒や清掃は一度で済むわけではなく、何度も繰り返しながら行います。
その際、資格を持っていないと扱えない特殊な薬品や、一般には揃えることができないような道具が必要となることもあります。
自分の体を守りながら部屋を殺菌・清掃していく作業は、プロに任せましょう。

もし、あなたが特殊清掃の依頼人になったら……

いつ起こるかわからない孤独死。もし離れて暮らしている家族がいるなら、あなたも依頼人になる可能性があるかもしれません。
特殊清掃を依頼する側になった時の対処についてみてみましょう。

  • 遺族は原状回復の責任をどこまで負うべきか?
  • 遺族か? 連帯保証人か?
  • 清掃費用を抑えるためには?

遺族は原状回復の責任をどこまで負うべきか?

賃貸契約を結ぶ際には、ほとんどの場合、連帯保証人が必要ですよね。
保証人は血縁の人を選ぶ場合が多いのですが、もしあなたが連帯保証人を引き受けていた借主が亡くなった場合、どのような責任が生じるのでしょうか。
また、遺族に責任が及ぶことがあるのでしょうか?

遺族か? 連帯保証人か?

孤独死や自殺された事故物件は、原状回復しなければ次の人に貸せません。
原状回復が必要な場合、遺族と連帯保証人、果たしてどちらに責任があるのでしょうか?

一般的には遺族側が負担するケースがほとんどですし、連帯保証人も親族に限っていることが多いですね。
遺族は、相続放棄をすれば原状回復費用の支払い義務はなくなります。
しかし、連帯保証人は、保証人であるその責任から逃れることはできません。
遺族であってもなくても、連帯保証人となっている人は、たとえ相続放棄をしても、原状回復費用の支払い義務があります。

ただ、孤独死の場合、もし遠縁の親戚などを見つけたとしても、法的に費用負担の義務があるかどうか(相続権があるかどうか)は難しいところです。
だからこそ、賃貸の連帯保証人は近い血縁の人を選ばせることが多いわけです。

これは、日本では「身内が責任をとるべき」という考えが強く、親族を連帯保証人にすれば、責任をとってもらいやすくなるからです。

清掃費用を抑えるためには?

原状回復にかかる費用は、部屋の大きさや業者によって異なりますが、費用をできる限り抑えたいのは人情ですよね。
それには、優良業者を選ぶことが第一です。豊富な経験と知識があり、依頼者の立場に立った作業をしてくれる業者は、遺族の負担をなるべく少なくするよう、必要な作業だけを行います。

しかし、なかには本当なその必要がない状態なのにリフォームを勧めたり施工したりし、高額な請求をしてくる業者もいます。
できる限り複数の業者に問い合わせて見積もりを出してもらい、また、本当にこちらの立場に立って作業してもらえそうかどうか見分けることが大切です。

もし、あなたが大家さんだったら……

次は、逆の立場で考えてみましょう。貸している物件で孤独死や自殺が起こると、賃料や清掃費用、次の借り手が見つからないなど、さまざまな損害が出ます、
そのような場合、大家さんは遺族や保証人にどこまで補償を請求できるのでしょうか?

  • 請求できるのは?
  • いざという時のために

請求できるのは?

大家さんが請求できるのは、以下の費用です。

 

原状回復費用

原状回復のための特殊清掃費用です。状態によっては部屋のクリーニングだけでなく、備え付け設備の取り換えや内装工事費用なども請求することができます。

退去までの家賃

発見までに時間がかかることが多い孤独死や自殺。発見されるまでの間も、家賃は発生します。
家賃は遺族によって契約解除され、部屋を清掃して完全に退去するまでの家賃を請求できます。

賃料収入減少による損害賠償

貸している部屋で借主が亡くなると、事故物件となり、しばらくその部屋を貸すのが難しくなります。
さらに、噂が広まると引っ越してしまう人が出たり、次の入居者を確保しにくくなったりするため、アパートやマンションから全体で見ても賃料収入が減ってしまいます。
このような場合、借主の相続人に対し、損害賠償を請求できる可能性があります。

いざという時のために

近年、孤独死や自殺の問題はますます大きくなってきています。それに比例して、部屋の清掃や片づけの問題や責任の所在も大きくなっています。
身寄りのない住人が亡くなってしまうケースも少なくなく、全ての費用を大家さんが負担しなくてはならないかもしれません。

そんな事態に備えた新しい保険「賃貸住宅費用補償保険」が登場しています。
これは、所有する賃貸住宅戸室内での死亡事故に対して保障をしてくれる保険です。
この保険では、「家賃損害」と「原状回復費用」が保障されます。

家賃損害

次の入居者が決まるまで空き室になってしまうことによる家賃損害や、事故物件として値引きせざるを得なかった場合の家賃損害が補償されます。

原状回復費用

事故が発生した部屋を原状回復するための清掃、特殊清掃、室内の修復、遺品整理にかかる費用が補償されます。

安心で安全な賃貸経営をするために、このような保険を活用していくとよいでしょう。

核家族化、高齢化が進む日本。今後、特殊清掃の需要がますます高まって行くと予想されます。
特殊清掃に関して知っておき、いざという時に困らないよう備えておきたいものです。